コールサックシリーズ

藤貫陽一詩集
『緑の平和』

超氷河期の情景は苦い。放射能の時代は辛い。現代社会の荒波にさらされて、それでも人間を信じよう。孤高の精神がふと見せるさりげない優しさ。 屈折し、反逆しながら、ひたむきに世界と向きあう詩のこころ。 足もとの苦悩から宇宙感覚まで、個性的な第一詩集。

解説:佐相憲一
四六判/128頁/上製本
定価:1,542円(税込)

解説文はこちら

藤貫陽一詩集『緑の平和』

発売:2011年11月9日



【目次】

Ⅰ  五十年カレンダー
寒いよう
五十年カレンダー
市民楽団コンサート
大学の実験室
魔法使いの女
4と8
コインランドリーで
浜子よ
気 分
虫喰い
寺山修司ですか
無名詩人働く

Ⅱ  冬休み
こうもりになれよ
機関車よ
白い兎
黒い情念
風 船
配 給

91遊び
限定句
NHK
私のコースター
冬休み

Ⅲ  緑の平和
宇宙に捧ぐ
人間の比喩
私のセンサー
僕はそれを知りたいの
緑の平和
律すること
東京全力
二十一世紀の第一歩
ニュートンのペンだこ
憧 憬
コーヒー豆の秘密
宇宙に飛んでけ

あとがき
略歴


詩篇

「寒いよう」

一バレル九十九ドル
まで迫った年の冬
だったでしょうか

甥っ子と 縁側で
たっぷり 日向ぼっこを
百ドル分は したでしょうか

夕方になって
目やにがひどいので
お湯で顔を洗わせました

迎えが来て 甥っ子は
ママに怒られた

袖口がびっしょりじゃない
脱ぎなさい

外に出て
寒いよう

悪かったね
ママに温めて
もらいなさい

寒かった日のことを
いつか思い出すように

おじさんは その夜
まだまだ修行が足りないと
水シャワーを浴びましたよ


「冬休み」

冬休みに
天才を 量産できる
わけもないのに

冬休みの生徒にとっては
今が追い込みだ

将来の夢や希望を祈る前に
除夜の鐘は打たれるのだ


「宇宙に捧ぐ」

星々は
研究者の目的のために
あるのではない

我々のいる大地も
私たちの目的のために
あるのではない

実用品が分解されるとき
私たちは
粒子の世界に
解放される


「緑の平和」

季節がくれば
茂らせる

太陽のせいだ

毎年 毎年
生産できるのは

GNPは
太陽のせいだ

緑の平和を
ないがしろにしては

GNPは
成り立たない

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