大井康暢詩集
『象さんのお耳』
象さんの耳はなぜ大きい それは遠いところから/神のお告げを待っているからだ/大きな耳 それは 水の音を聞き分けるためにある/水の音を聞き 水の危険を知っているのだ/地震や津波を仲間に知らせるために(帯文より)
栞解説文:鈴木比佐雄 |
A5判/184頁/上製本 |
定価:2,160円(税込) |
発売:2011年8月26日
【目次】
目次
一章 夕蝉
石割りざくら
訪れ
春
春の海
花すだれ
花のいのち
雷鳴
夜の蛙
夕蝉
苔
寒い夏
秋
上州の秋
凍る秋
冬の花火
二章 難民の季節
難民の季節―タケミツに―
指揮者の顔―クラシックファンに―
作品一三二番イ短調
勧進帳
第三の男
白い雲
笑う
父
いのち
三章 雪が降る
雪が降る
春の別れ―Sに―
落花
ブルカ
死の床で
大森隆夫に
四章 象さんのお耳
暁
元日
富士
碁打ち
愛の神話
神の涙
夜の雨
ミイラは眠る
黒い地球
消える
末期の眼
津波
震災余話
少女、この世の宝もの
象さんのお耳
あとがき
詩 歴
詩篇
「象さんのお耳」
象さんの耳はなぜ大きい
それは遠いところから
神のお告げを待っているからだ
砂漠に沈む焼け焦げた真っ赤な太陽
高い空から光が降り注ぐ
砂と草原の陽炎のたつサバンナ
野生の聖域を群れなして歩く
大きな耳 それは
水の音を聞き分けるためにある
光にきらめき
ちょろちょろと滴り落ちる
熱帯樹林の幹を伝って
砂漠の水を集めて木陰の池に流れる
水のさわぎを聞くためにある
耳
百キロの遠くからでも聞き分ける
水の音を聞き
水の危険を知っているのだ
地震や津波を仲間に知らせるために
おそろしい悲鳴をあげ
長い牙を振り立てて
遠く高い所へ狂ったように逃げる
耳を広げ翼となって
それが象さんのお耳