刻まれたおびただしい死。彼の父、母、妹琇子。
詩「死んだ少女」の少女は私の同級生。
不意の出逢いに私は息をのむ。
そして詩「脅え」―ぼくの唯一人の子がやっと九ヵ月―
言葉はやわらぎ詩は命を得て輝きはじめる。
誰よりも生を愛したかんさんの、生涯の詩である。
林 京子(作家)
解説文:高塚かず子、田中俊廣、鈴木比佐雄 |
A5判/624頁/上製本 |
定価:5,400円(税込) |
発売:2011年8月9日
【目次】
Ⅰ 第一詩集 いのちの火 (一九五四年)
道 程
序 詩 22
琇子へ上げた詩 22
廉い服地 24
人 参 25
呟 き 26
言葉の後 26
女ノ人タチ 27
病院の庭
看 護 28
鋼鉄のボンベ 29
呼 吸 30
轟 音 31
無國籍 32
フラスコの宝石 32
ランプ 33
峠 34
曠 野
道化たドラマと 35
現 実 35
黒のオーバー 36
赭皮の靴 37
幻 惑 38
時 代
戦 争 39
原 爆 39
混 乱 39
道 程 40
死 40
砂糖壺 41
貨幣価値 41
ナルシスの花 42
帰 郷 43
デコレイションケイク 44
氷結する花
ここに二つの祝い菓子 45
祈 り 45
琇子が居らぬ 46
古代より 46
罪 悪 47
妹の夜につながる 無音階の夜 48
華 燭 50
訣 別 51
外人墓地 Ⅰ
死の終末 52
二月の詩 53
新田原 54
心象風景 54
Ⅱ 第二詩集 記憶の固執 (一九六九年)
無 題 60
武 器 60
浦上へ 61
ロスアラモス 61
望 楼 63
みたびの死 63
洞穴と庭と風 64
この貌のプロメテ 65
モータープール附近 66
地点通過 67
夏の路 68
狂暴な玩具 69
輸送現象 71
訊 く 72
湖底都市 73
夜の原爆公園にて 74
広島の黒 74
川に行く 76
炎のなかから 77
突然変異の話 80
夜の激しい気象のなかで 82
破壊と恢復 86
灰が飛ぶ街で 87
朱い実青い貌 88
碧に白い構築に 89
鴉 90
レヂステンスなし 92
石 94
傾斜地 95
埋 没 96
標 Ⅰ 97
切支丹史 98
立ったまま眠る 100
ウデウデ時計 100
樹 Ⅰ 102
樹 Ⅱ 102
ナチスの夢 Ⅲ 103
標 Ⅱ 104
島 104
日常 Ⅲ 105
銃の遊戯について 106
高い天 108
凧の遊戯について 109
長い道を…… 109
Ⅲ 第三詩集 ナガサキ・腐蝕する暦日の底で
(一九七一年)
作品Ⅱ
哄笑する河 114
噴射する指 114
海へ行く部屋 115
断 章 116
落ちる現象 116
鉄 塊 117
蝶 118
ビルびる 119
耳 121
蝟 集 122
記 録 123
算 術 124
朝鮮が見える 126
堂崎鼻にて 127
とおくへ消えた 129
夢・冷蔵庫 130
半 島 130
眺めている 132
断片連続的 Ⅰ 133
断片連続的 Ⅱ 134
長イ日ノ底カラ声ガ…… 135
闇から発し闇はめぐる 137
視 る 140
腐蝕する暦日の底で 141
都市論 143
時の構図 144
ふたたび還ることなき 145
Ⅳ 第四詩集 アスファルトに仔猫の耳(一九七五年)
Ⅰ 伝説から未来へ(一九五二―一九五五)
自由について 148
電 車 148
外人墓地 Ⅱ 149
火熨斗の歌 149
檻のなかの囚われの石 150
夜について 151
雨に濡れる陶器 152
埋 葬 153
伝説から未来へ 154
秋 156
永く見つめたのち 157
夜から朝へ 158
記 録 159
帰航 Ⅰ 160
海を見にいく Ⅰ 160
Ⅱ 鯨と馬(一九五六―一九六五)
硝子のなかの赤い目 161
大乾湖 163
飛ぶ髪 165
賭ける 166
はやく昏れる町 168
ボギイ車遊戯 169
黒い詰襟 170
砂漠の船 172
哄笑する河 Ⅱ 174
鯨と馬 175
断絶する事件が 176
飛ぶ赤い章魚 177
黒い河または愛 178
ちっぽけな夢の囁き 180
長い道の果にエビを見た 181
ぼくの壁 183
眼球の中の情景 185
心臓のある風景 186
室 187
アパート莫迦 189
豚 図 189
未 開 191
遠い丘 192
虎と風船 194
顔をとび去る構図について 194
世界をのがれ 195
脅 え 196
造 る 197
棄 198
謀 議 200
ナチスの夢 Ⅱ 201
福江開田町にて 202
鴉 203
十月の詩 204
十二月 205
稲佐・オロシヤ墓 206
Ⅲ アスファルトに仔猫の耳(一九六六―一九七四)
日常 Ⅱ 208
日常 Ⅳ 209
ポスト附近 210
柩 211
海を見にいく Ⅱ 212
乾燥する 213
目・なめくじ 214
島へ Ⅱ 215
ああ・世は 215
投石二篇 216
駱駝と馬 217
しほから 218
明 日 219
帰 路 220
倒壊または独りの唄 221
女・鳥の首 222
無 題 223
糸 瓜 223
反作品的実存 224
碑 屋 226
聖 夜 227
日日のなかの一章 227
断片連続的 Ⅲ 228
北松浦郡 229
新しい生へ 230
五島・奥浦にて 231
野菜売りの声 232
夢・厠棟 233
過客・埋没のうえを 234
墓地にて 236
ホットケーキの月 237
井 戸 239
十五歳 240
美しい日本と私 241
消えた 242
彷徨・ケロイド 244
金ととの赤い貌 244
死んだ鴉 246
長崎・諏訪荘にて 247
おなくなり 248
自失する風景 249
牛の目 250
沈むプラタナス 251
秋草ふたつ 252
昼間の風景 252
闇瞑の涯にして 253
内部の魚 254
造成譚 菜根譚 255
汚れた土地 257
涯 へ 258
陸橋風景 259
あの街の底の六行詩 260
河口に壊れていく 261
むしおい人考 263
夏・隠された街へ 264
消えた台地の無言歌 267
出島の日はとおく 268
ぶ跳ぶ 269
哀しい目について 271
犬継へ行く 271
状況の底は抜けぬままに 272
ピーマンを買う 274
小峰町交叉点にて 274
暗冥の彼岸にて 276
佐世保港を出る 278
北松・小値賀島へ 279
アスファルトに仔猫の耳 280
鳥 よ 281
Ⅴ 第五詩集 予感される闇 (一九八一年)
作品Ⅱ
非 核 284
カンボジアの飯盒 284
富川渓行 285
詩人Kへの悼歌 286
旧筑後町通り 287
A氏の持つ鉄の匣 288
カナン幻想 290
塔について 292
瓦 293
北松・生月島にて 294
山峡の駅をすぎ 295
十月・蔵王の水 Ⅰ 295
十月・蔵王の水 Ⅱ 297
応答して……… 297
白馬の天皇 298
結氷する塔 301
路上の鳥 302
船が浮いている 302
工夫たち 303
言葉の天皇 304
白血の鴉 307
否定の同志 307
道の尾・長崎七分間 309
濁っていく 310
高架広場にて 311
第三の男または雨のなか 312
つづく夢 313
夢・冷凍庫 314
海に沈む石 315
海を見にいく 316
豚三頭 317
水膜の底に 318
彫塑論 319
空洞の迷路のように 322
プラットホームにて 324
一日または海と魚のある風景 Ⅰ 325
一日または海と魚のある風景 Ⅱ 328
一日または海と魚のある風景 Ⅲ 330
梅田地下にて 333
どこも街 334
島への旅に 335
夢・冷蔵庫 Ⅱ 336
あなごめし または 337
全 滅 338
買う・占める 340
関ヶ原の雪 341
糸島郡 342
死んだ少女 344
くるまのぼんぼり 345
無為なる日の……… 346
非革命十二章 346
デッド・ウォーター 348
少 年 349
自動記述的連鎖十三章 350
コラージュ 352
八 月 353
水 郷 354
塩浜町にて 355
食の幻想 356
K・遠い語りよ 356
一日または海と魚のある風景Ⅳ 359
噂 360
出かけていく 361
瞬間の光景 362
一日または海と魚のある風景 Ⅴ 363
雅風子の魚 365
Ⅵ 第六詩集 長與ながよ (二〇〇一年)
明けそむる日に 368
文政の村 368
わが町 369
長与の海辺 370
矢別にて 370
堰のある風景 371
反文明のうた 371
閑雅に昏れた 372
長与に暮らす 373
道 373
去年 今年 374
長与の冬 374
両手の皮膚よ 375
母郷よ 375
郷愁記 376
長与よ 376
晴れた日に 377
長与皿山 377
中尾城公園にて 378
いずこの川へ 379
遥かな山 379
皆前人道橋 380
長与を想うとき 380
昔になった 381
はるかに過ぎた日 381
どんぐり 382
Ⅶ 第七詩集 長崎碇泊所にて (二〇〇二年)
『草土』期篇
湖南省人 386
走る女 387
上滝望観 388
空の高みを昇りつめる思念のうちに 388
青 年 390
思いこみ 391
河口にて 391
服 喪 392
郷 393
行方不明者に 393
夏・断章 Ⅱ 394
なぜかゲバラが…… 395
スケッチ・ブック 八篇
S市アーケード商店街 396
海底に石積む 397
鎮守の森にて 397
魚およぐ鮮魚店 398
有明海の昼 398
窓外の鳥 398
この小都市は 399
旧師閑寂 399
肉の大きさ 400
写された魚 400
未来幻想 401
他人の関係 402
大鴉 Ⅲ 403
車 内 404
『列島』 405
食 卓 408
夜の祠 409
帝国主義 409
イザベラ 411
軽 量 411
スケッチ・ブック 九篇
湧 水 412
かんざらし 412
耳洗亭あと 413
牛 413
神 社 414
願掛絵馬 414
狛犬のまえで 415
S市アーケード商店街 再び 415
小 港 416
アーミイマップ 416
外務課事務簿について 417
宮崎へ 418
仔 犬 419
夜 419
叫 び 420
桃 420
バックミラー 422
またも還らずああ遂にまた 422
歴史的必然ということ 424
夢・冷凍冷蔵庫 426
歩道橋 427
知られぬ死 428
時が…… 430
大 地 430
移住人哀歌 431
市場にて 432
桜の花冷え 433
両 親 433
与謝郡 434
琴尾岳にて 435
飴の詩 436
校正作業 437
白樺派 438
晩 年 438
とくに今年は・夏のおわりに 439
『河』期篇
さらば墓も 440
散るように 441
コロプチカ 442
それぞれの…… 443
八月の夜 444
見よ、このパウロ 444
或る日のことについて 445
雨もよひ 446
菖蒲忌 447
覚えている 448
ついの煙 449
夏・五十年 450
裁定請求書 451
ひばり 452
四月二日気温四度 452
ある日に 453
水 猫 454
丘についての望郷 455
毛 蟲 455
ことば遊び 456
医院から帰る 457
夏のことがら 458
童 女 459
夏の手 459
変な境遇 460
佇つ男 461
蟬 462
独りごと 463
『カサブランカ』期篇
園児運動会素描 463
古館蹟 465
空 465
友だち 466
ドーバーのアジ 467
おんどり 467
花の名前 468
風 景 469
山の鞍部へ 470
がらす 471
薔薇と心臓 471
節 分 472
苦い水 473
病 室 474
海も空も遠くて 475
夜の戦車 475
『詩誌・雑誌』篇
眼下の海 476
ブロークン・アローの歌 476
夏の日射しよ 477
海を見ている 478
クーデターキッス 479
漱石が 479
漱石が…… Ⅱ 481
魔王の夢 483
大洪水 483
歯または歌 484
十字架 485
夏・断章 486
帰り来よ と― 487
大 鴉 488
大鴉 Ⅱ 489
自転車置場の池 490
蜜 柑 491
朝の声 491
私の昭和語彙集 493
恋人よ 494
非連続する夢四章 495
その日 496
法事のある村へ 499
いのちの火 501
私詩二篇
下水路 502
アラカブ 503
蝶からはじめる 503
同窓会 504
パジャマをたたむ 506
パールハウスの叔母 507
庭 師 508
数ある日のなかの 508
新大工町界隈 509
破籠井・熊野神社 510
連詩の試み
南 瓜 511
狂 女 511
森 下 512
浦 上 512
琇 子 512
道 筋 512
蟻 道 513
夏 骨 513
忘 失 513
残りの夏 514
名 札 514
蕗の薹その今 515
擦れ違う 516
「ポネット」 517
テロリスト 518
紀元書房 519
向かいの家 519
写真一葉 520
『小篇拾遺』篇
夏の刹那に 521
地の果 521
九月の詩 522
イカと花車 523
おうどん 524
上 空 524
コップ一杯の 525
季の話題 525
レモンの木 526
六月のうた 526
友 よ 527
暦が還る 528
ハツコさん 529
醒める 530
読書録抄 530
異口同音 531
野 辺 531
転形期 Ⅱ 532
片づける 532
秋模様 533
書かない 533
ヒメダカ 534
Ⅷ 未収録詩
【一九五〇年代】
あの夜月が出たならば 536
今宵名月だ 536
再びごあいさつに 536
巡査になった友へ 537
祭のくる日 537
歯と皮膚と 538
十二月二十二日 538
今日の落漠 539
判決と散髪 539
―片隅の目― 540
死んだ男の背景 541
洋行と街を吹く風 542
盗まれた火 543
死の死の死の…… 544
白い稲 545
窓 546
夢 546
暑い日の哀慟 547
追 憶 548
硝子のなかの赤い目 549
赤い噴霧の部屋 550
ほんとか? 555
夜の飛行機 556
部分と全体 557
夢の危機 558
ある寓話 559
夜を生きる 561
与太者悲歌 562
海へ通じている部屋 562
【一九六〇年代】
火の接吻 564
ぜいたくについて 564
珊瑚礁 564
薬 莢 564
童話Ⅲ 565
【一九七〇年代】
闇瞑の涯にして 566
終着へ 566
NAVAL PORT SASEBO 567
【一九八〇年代】
深い土色の声 569
紫陽花の雫のしたで眼をあけて三毛の仔猫が硬くなって いる 569
スケッチ・ブック九篇
「反時代」 569
【一九九〇年代】
原風景 571
不 在 571
【二〇〇〇年代】
瀬戸夕暮駅 573
言葉とカラスミ 573
Ⅸ 解説
瀬戸夕暮駅まで 高塚 かず子 576
〈まっとうな虚無〉の淵から・山田かん論
田中 俊廣 579
父と妹の「いのちの火」を長崎から世界へ発信した人
『山田かん全詩集』に寄せて 鈴木比佐雄 586
Ⅹ 山田かん 年譜 596
編 註 622