コールサックシリーズ

尾崎寿一郎評論集
『ランボー追跡』

尾崎さんはランボーに熱狂することなく客観視しながら淡々と生涯を記述していく。そして読者に「内なる他者」を抱えて「見者」たらんとした一人の詩人の栄光と挫折と悲劇を等身大で差し出してくれている。この尾崎さんの労作『ランボー追跡』は、未知の領域に挑んだランボーという革命的な詩人像の長篇叙事詩を読んだような深い感動を読者にきっと与えるに違いない。
(鈴木比佐雄 栞解説文より)

解説文:鈴木比佐雄
四六判/288頁/上製本
定価:2,160円(税込)

解説文:鈴木比佐雄はこちら

尾崎寿一郎評論集『ランボー追跡』

発売:2011年6月2日



詩人アルチュール・ランボー。その歩みをパリ・コミューンなど当時の社会情勢の中でとらえ、「内なる他者」にとりつかれた青年の詩的な飛翔を新たな視点で追跡した労作。神格化されてきた詩人を、時代の現実の中の叙事詩的展開という視点で再考し、人間としてのランボーの内面に迫る。(紹介文・詩人佐相憲一)


【目次】


第一章 普仏戦争と三度の出奔

はじめに
来歴と中学時代の作文
普仏戦争勃発と敗戦
最初の出奔
第三共和政とパリ包囲
二度目の出奔
甘えの極限とバゼーヌ逃亡
休戦反対とコミューン萌芽
休戦協定と闇物資の「税関吏」
不吉で聖者である「烏たち」
擬象法「坐ったやつら」
総選挙と講和予備協定
三度目の出奔


第二章 コミューンと見者の手紙

協定反対と三月一八日蜂起
アルバイトと「愛の看護尼」
パリ・コミューンと内戦
作り話四度目の出奔
一つ目の見者の手紙
埒外の義勇兵「パリの軍歌」
二つ目の見者の手紙
憑依現象としての他者
見者に至る地獄道
コミューン壊滅

第三章 パリ熱望と詩法確立

聖者罵倒と「最初の聖体拝受」
憤怒「パリのどんちゃん騒ぎ」
呪われ人こそ「正義の人」
ユゴーの消息と女囚ミッシェル
大御所への挑戦「花について」
軍事裁判と死刑囚フェレ
パリ熱望と見者呪文「母音」
熱い反響と「山羊の屁男爵の手紙」
予想と挑戦「酔い痴れた船」

第四章 二人の地獄めぐり

カルチエ・ラタンの寵児
ヴェルレーヌの争奪
カルジャ刃傷事件と自嘲詩「恥」
来たまえランプ君と糞喰らえ
素顔のランボー「我慢の祭」
地獄めぐりの道行き
渡英とロンドン生活「放浪者」
愚かしい笑劇と農村蟄居
二重人格の噴出する「悪い血」
破廉恥な噂話と喧嘩別れ
七月一〇日ピストル事件
泣き呻き罵り怒る「地獄の夜」

第五章 二つの詩集と詩の放棄

地獄めぐりの決算「序詩」
狂える処女の「錯乱Ⅰ」
うぬ惚れと自己弁護「錯乱Ⅱ」
ぼくたちの袋小路「別れ」
詩集『地獄の一季節』私家版
ヌーヴォーとのロンドンと破綻
ドイツ語学習とヴェルレーヌ釈放
アルプス越えと詩の放棄
未刊詩集の叩き売り「セール」
侵略・植民地化罵倒の「民主主義」

第六章 その後のランボー

植民地部隊入隊・脱走
再度のアルプス越えとキプロス島
バルデー商会ハラル代理店勤務
ハラル店長とパリの偶像詩人
悪夢の旧式銃キャラバン
ハラル貿易商とエチオピア建国
ランボーは見者たり得たか
右脚切断と全身転移癌

あとがき
参考文献
略歴



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