コールサックシリーズ

詩選集シリーズ

『大塚史朗詩選集一八五篇』

〈おまえうたうな/あかままのうたうたうな〉/とうたったなかのしげはるさんよ/あなたのうた大好きだったが/今も尊敬しているが/おれはうたう/あかまんまのうたうたう(略)収穫したものすべて食膳に上ること夢見て/あかい草の実/祭りの朝の/婚礼の夜の/赤めしのごとく喰べられたならという/願いと怨念のしみこんでいる/草の花
(詩「赤まんま」より)



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解説文:佐相憲一、鈴木比佐雄
四六判/256頁/上製本 ISBN978-4-86435-109-6 C1092 ¥1500E
定価:1,620円(税込)

大塚史朗詩選集一八五篇

発売:2013年5月10日



【目次】

第一詩集『頰かぶり』(一九七六年刊)より

馬鈴薯植え
利根河原にて
村 道
いっぺんでもいい
父の死・家族たちへ
雨降り草
あざみ
米の花
父の墓碑名
埋 葬
糸 車
頰かぶり

第二詩集『生産』(一九七七年刊)より

生 産
文字の詩
 女
 男
 国
 民
成 長
真 理
地下茎
田んぼ
夏のうた
歳 月
おきりこみ
なすびの馬
すずめがくし
赤まんま

第三詩集『川岸』(一九八〇年刊)より

幼年 1
幼年 2
幼年 3
川岸 1
川岸 2
流し雛
黒い鳥
花 籠

第四詩集『萩の花』(一九八七年刊)より

教 育
踊 り 
頭 髪
写 真
帰省した娘
いぶり漬け
レタス 
萩の花
さくら ちる
秋・旅の宿で 

第五詩集『握り拳』(一九八九年刊)より

寒い秋  
旋回壕  
母 猿  
盲目の祖母  
挨 拶 
ほたる  
山 桜 
握り拳  
豚の仔を生む 
太太神楽
詩人H氏の盗み  
結婚したがらない娘へ 

第六詩集『記憶』(一九九三年刊)より

記 憶 
論 理  
寓 話  
シベリア帰りの先生 
消えていく 
青春賦・四季
 春  
 夏  
 秋 
 冬 
水について 
レンゲ米 

第七詩集『黒い蜻蛉』(一九九五年刊)より

黒い蜻蛉 
つくしの丘 
光りっ木  
いも畑 
松根油取り 
一言ご挨拶 
土入れ 
桑ぜの皮むき 
麦ふみ  
まぶしおり 
つるべ井戸 
石 臼  
史 朗 

第八詩集『たわいないうた』(二〇〇〇年刊)より

冬の夕日 
リュックを背負う  
春の七草  
蛍よトンボよ 
祖母のうた 
荒地野菊 
うまいもの 
我が家の晩餐 
仕 事 
たわいないうた  
自然と人類 
八月の色は 

第九詩集『ふるさとひろって』(二〇〇二年刊)より

テッコバッコ 
ゲエロッパ  
ホロスケ 
イシッタタキ 
シビビイ 
センゼバ 
チョチョコナル  
デタラッパチ 
ジクナシ 
ダンベエ  
へッチョイ  
ビションメエ 
イイアンべエダイノウ

第十詩集『日本国憲法の本』(二〇〇五年刊)より

日本国憲法の本  
第五福竜丸を見に行く 
他国の空  
食への考察 
足の痛みに耐えながら 
弥彦神社の悲劇 
チャバク 
海ゆかば 
夜の海 
ふるえているもの 
息 子 
兵士の背中 

第十一詩集『引き出しの奥』(二〇〇七年刊)より

キツネノヨメイリ  
青面王  
貯金箱 
宝 
信 仰  
花の道 
風 景  
ギョメイギョジ 
動いているもの 

第十二詩集『上毛野万葉唱和』(二〇〇八年刊)より

ジンジクしている  
田 植  
虹 
くずはがた 
ククタチ  
逢えた君は 
子持山  
あかみやま 

第十三詩集『野の民遠近』(二〇〇九年刊)より

道祖神 
二十二夜講  
山神サマ 
二人っきり 
狐つき  
介 護 
精 霊  
楢 山 
桜花散る下で  
どどめの味 
ジョン山 
赤城山 
神の塔 
痛 み  
ゴミの行方  
農 政 
カンボジアでのダイエット
若水を汲む 
馬に蹴られた詩人 
青い魚  
ナスビの馬 

第十四詩集『おじぞうさんと生きものたちと』(二〇一〇年刊)より

おじぞうさん 1 
おじぞうさん 2  
子育地蔵尊 
灰ねり 
いづめ 
鳳仙花  
鳩 
猫 
蟬 
羽 音 

第十五詩集『金婚』(二〇一一年刊)より

ジグソーパズル 
秋の庭 
明け方来る人 
金 婚  
夢 
峠  
空を飛ぶ 
ママサン・カムオン 
地中で過ごして 
予 兆  

第十六詩集『記念樹』(二〇一二年刊)より

海を見に 
脱原発詩を書く 
「君が代」はうたわない 
蒲の穂綿 
記念樹 1 
記念樹 2  
学者センセイ 
絵本の記憶 
山 
螢の川  
ふるさとそれぞれ 
盗 難  
生きていくこと 

解 説

野と農からの現代詩     佐相 憲一  
榛名山の麓で「小さな光」を育て発信する人   鈴木 比佐雄

略 歴 



【詩篇紹介】

赤まんま

〈おまえうたうな
 あかままのうたうたうな〉
とうたったなかのしげはるさんよ
あなたのうた大好きだったが
今も尊敬しているが
おれはうたう
あかまんまのうたうたう

勿論腹の足しにもならないし
行く人々の胸郭にたたきこむ
ことなんかできないけれど
おれはうたう
あかまんまのうたうたう
誰もうたわなくなってしまったから
うたう

今年は冷たい雨が続いて
秋祭りが過ぎても
たれさがることを忘れた稲穂をさすり
何度も溜め息をもらしながら
突立っている畦の上
刈り取っても
切り取っても
小さいからだに
天を突きさすタネいっぱい実らせて
色染めを落とし過ぎた
赤飯をばらまいたごとく
咲き競っている
夕焼けの光にゆれる
赤まんま

かつて父祖たちの秋
みのりの季節迎えても
白まんま
茶碗いっぱいに盛り上げて
目の前に現れるのは
土葬される夕べだった日
刈り取りあとの
痛む腰さすりさすり
領主にも
地主にも
強制供出にも
脳味噌痛めることなく
収穫したものすべて食膳に上ること夢見て
あかい草の実
祭りの朝の
婚礼の夜の
赤めしのごとく喰べられたならという
願いと怨念のしみこんでいる
草の花

一九七六年・秋
やはりまっかっか
まっかっかの夕日に
稔らない稲穂
白くすきとおり
風にさらさら音たててる
田んぼにたたずんで
前渡金の返済や
機械屋からの請求書のことや
農薬や肥料代や借金や
刈り取り前から
出稼ぎに出た
友のあんじょう気遣いながら
今日も一日
赤まんま
せめてこれがあかいおまんまだったらと
願いをこめた
先祖たちの歴日が
肩すぼめながら
突立っている
おれの胸郭にどっと
侵入してくるのだ
赤まんま

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