全詩集
畠山義郎さんは、秋田県北部に根差した詩人・エッセイストであり、また自らの理想を現実化していった合川町の町長でもあった。十代後半から今年九十歳になる七十年間を超える詩とエッセイの創作活動は、まさに畠山さんの織り成す優れた一篇の長編叙事詩であるように感じられる。
(鈴木比佐雄・解説文より)
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解説:亀谷健樹、磐城葦彦、鈴木比佐雄 |
A5判/528頁/上製本 ISBN978-4-86435-104-1 C1092 ¥5000E |
定価:5,400円(税込) |
発売:2013年4月24日
【目次】
■第一詩集 覊旅 (一九四六年)
自 序
煙
歳 末―秋田市にて
初 秋
春もなかばの日のうた
雨
休鉱山
ある断章
春―津軽旅情
跋
■第二詩集 別離と愛と (一九四六年)
序 詩
Ⅰ 別離と愛と
皿―レストランにて
孤 独―別題 宿命の処女
けむり
母びとに愧ず
わがいにしえのひ
―われ過ぎにし日病みて幾とせ春を送りし
別離と愛と―T子に捧ぐるの詩
雑巷の詩
さすらいのうた
嫁の話
詩
花
愛の詩
鰰
水
きょうも渓合に鼓が鳴る
友は逝きぬ―嗚呼加才信夫
秋声有情
Ⅱ 旦 暮
秋
某 日―詩人のかなしきを知るや
秋
馬
覊 旅
Ⅲ 風 景
冬晴れ
二 月
風 景
■第三詩集 故郷の星 (一九四七年)
1 第二の詩集
第二の詩集
巨き星にむかえて
祝婚歌―英雄と房子に
盲 い
掌
パオンのごとき
蜘 蛛
いたつきのひさしきおとめ
縞 蛇
貝
青き銀杏葉
2 真夏の懺悔
私の故郷―掌は関する詩
風 笛
朝の舗道
南 瓜
我が掌を
この秋は
あとがき
■第四詩集 晩秋初冬 (一九四九年)
晩秋初冬
晩秋初冬
ある狂騒曲
深夜樹海に鳴る風
反神論
樹 木
旗
一握の灰と化す身は
西欧の日溜り
雪
招かざる日々
色彩論
霰
真夏の懺悔
真夏の懺悔
疲れざる性
蛾
落 日
満月の中に
郷 愁
杉樹皮の虫
季節の別離
生 涯
秋風のおとずれ
旦 暮
初 秋
無 題
旦 暮
秋
水
裸
鴉
■第五詩集 雪の模様 (一九六八年)
自 序
仮眠のひる
誕 生
雪 国
北壁のうた
馬・飢餓
雨の地平の日
領土(その一)
領土(その二)
雪と鴉
鴉・軍隊
日 本
東 京
長 雨
未 明―シベリアの秋・秋田の冬
盛 夏―東京にて
在京寸景―田端にて
州
雪の模様
師 走―百貨店で
鮭
河口魚
若い館長―小野青森県立図書館長
津軽紀行
初夏の山―津軽湯の沢附近で
ゴミ焼却場―戦死したS君のために
某月某日―サナトリュームにあんべ・ひでおを訪ねる
手 術―ますいの病床
那須野の冬―車中にて
釘のおと
谷 間
山村の春
車窓にて―東北本線のひるとよる
グラジオラス―淋しき日々(その一)
日 没―淋しき日々(その二)
ば ら
旗
かなしい風景 ―敗戦の秋深し
辞 世―一九四四年秋現役兵として入隊
秋 色
無 題
七月の風
冬 日
■第六詩集 日没、蹄が燃える (一九七七年)
序 真壁 仁閉じない目
Ⅰ 稲・十四篇
水、猫柳
径
生
朝
葦のずい
貝の耳
夜汽車
東支那海―車窓にて
満 月
睡 眠
秋ぐみ
日 輪―夜行列車の朝
金いちご
稲
Ⅱ 冬日、鴉・十三篇
数珠の世界
東京九月九日の雨
初冬の街角
雨の夜の街で
晩春譜
秋の迷路
甘藍畑にて
出稼ぎの神話
一九六九年元旦
標 的
日没、蹄が燃える
明け鴉
冬日、鴉
Ⅲ 松の花粉・十一篇
県境にて
高原にて
田沢湖高原
仙岩峠の茶屋―バイパスのために消える日
帰 秋
距離のシルエット
越年の譜
飢 餓
新雪、あなぐま
冬の帝国
松の花粉
あとがき
■第七詩集 赫い日輪 (一九八七年)
Ⅰ 赫い日輪
赫い日輪(その一)―回帰のこころ
赫い日輪(その二)―仙台にて
赫い日輪(その三)―東北新幹線にて
赫い日輪(その四)―白津山系にて
赫い日輪(その五)―八郎潟にて
赫い日輪(その六)―田沢湖にて
赫い日輪(その七)―秋田港にて
赫い日輪(その八)―晩秋の庭の一隅
赫い日輪(その九)―ベールの内側で
赫い日輪(その十)―フィンランドで
赫い日輪(その十一)―デンマーク寸景
赫い日輪(その十二)―帰路の詩
赫い日輪(その十三)―鵞鸞鼻にて
赫い日輪(その十四)―代々木にて
赫い日輪(その十五)―山形県赤湯にて
赫い日輪(その十六)―原宿にて
赫い日輪(その十七)―ケーブルの埋設現場
赫い日輪(その十八)―由利海岸にて
赫い日輪(その十九)―対馬にて
赫い日輪(その二十)―浜松町にて
赫い日輪(その二十一)―麗子の像
赫い日輪(その二十二)―神話・蝦夷共和国
赫い日輪(その二十三)―鼠ケ関にて
赫い日輪(その二十四)―落日
赫い日輪(その二十五)―地下鉄幻想
赫い日輪(その二十六)―一握りの夜
赫い日輪(その二十七)―不忍の池
赫い日輪(その二十八)―中国の旅から
赫い日輪(その二十九)―男鹿の杉
赫い日輪(その三十)―花と大砲
赫い日輪(その三十一)―西へ
Ⅱ 眼の偶話
眼の偶話
帰り花
春 悔
跋 赫い日輪とは何か 三好豊一郎
■第八詩集 色わけ運動会 (二〇〇三年)
Ⅰ 積み木
積み木
宿 題
神
師走の崖
北の村から
秋雨考
はじめのはじまり
ひとり歩けば
鴉・母子
秋・虫去る
盛夏幻想
欅の裸木
駱 駝
Ⅱ 夕立ちの神話
夕立ちの神話
韃靼海峡―安西冬衛追想
黄沙と鈴
北極星慕情
秋のはなし
禽の死
黄 落
回 帰
遅い羽化への献詩
ビルの谷間―バシー海峡譚
龍王の爪
晩春の虫・少女幻想
残照戯画―白いステッキ
魚寄せ木―松は魚に囁いた
現代翡翠考
Ⅲ 色わけ運動会
蓄積の賦
北の羽化
風景の風景たち
断章・鴉
鮭の構図―ウルトラマリン挽歌
囲の寓話
私ノ私ガ発見シタ私
色わけ運動会―赤信号を渡る
野外教室
卵のかたち
龍宮へのみち
あとがき
■第九詩集 鴉 (二〇〇五年)
はじめに (自序として)
秋
鴉
領土(その一)
領土(その二)
雪と鴉
鴉・軍隊
師 走―百貨店で
那須野の冬―車中にて
かなしい風景―敗戦の秋深し
明け鴉
冬日、鴉
高原にて
赫い日輪(その十九)―対馬にて
赫い日輪(その二十六)―一握りの夜
豚
はじめのはじまり
鴉・母子
断章・鴉
野外教室
鴉が鐘を
柿・鴉
師走の街の扉
眼差し
エッセイ
烏・鴉・烏・鴉
続・烏・鴉・烏・鴉
■第十詩集 無限のひとり旅 (二〇〇九年)
1 稲の花
稲の花
大根引き
こころ―記憶のうちそと
墓前祭
朝
出羽丘陵とピレネー―地図に住む人
冬の虹
警 鐘
2 山上のかたりべ
山上のかたりベ
この小径
孤
化 粧
浮遊のおと
夜明けのうた
祭りのはじまり
秋深し
3 旅びと還らず
旅びと還らず
ちるためのあきのくれない
眼 差
柿・鴉
4 北限の蝶
北限の蝶
夏の祭り
処女懐妊
雪原の星かげ
冬の川
5 八十路まんだら
八十路まんだら
草毟り
大穹幻想譜
雄しべ雌しべ
球根を運ぶ小蟻
こぶし相伝譜
6 幻想―踊る駒
ʻ08北緯四〇度正月譚
冬の太陽
蜜柑剝く―真冬の踊り子
虻の羽おと
連翹幻想
生殺与奪の朝―夏のおわりに
子年生まれまんだら
大潟村の菜の花
幻想―踊る駒―報恩のこころをこめて
7 無限のひとり旅
元旦の賦
宇宙の一滴
冬籠り
無限のひとり旅
雨一神教
あとがき
■詩集未収録詩篇
詩誌「詩叢」より
秋に触れて
自画像
師 走―あたたかい雨の降る日
雪野に
南窓に倚れば
春の息吹き
海
六月の風景
心 情
無 題
その日
詩誌「密造者」より
八十年の今昔―雀とにんげん
生きる
大地のおと―九月九日の記
饗宴・小蟻一〇〇〇匹
蟷螂(かまきり)の神話
眠らぬ指
胸したのあたりに
イヌノへ(ドクダミ)三態
やぶこうじ
夕焼けの向こうの国へ行って見たら
夕焼けの向こうの国へ行って見たら
啼かない鴉
命あるものの名
日本現代詩文庫『畠山義郎詩集』・『未刊詩集』より
稲(その一)
稲(その二)
青年の像―山形県のK君へ
ふるさとの山
防災戦争
山形にて
葩
灌 木
就 巣
地の果てのうた―盲目の日々
銀杏の年輪
サハリン紀行(その一)
「翼のない人間」
日本列島乾田考
夏と秋のはなし
チジンカの流れ
いま灯を消せ
海 狼―冬の男鹿半島
田の水
■短唱 戦争 そして孤独の春 (一九六四年)
序 柴田正夫
自序
■まさひでもあぐら―父と子の対話―(一九七七年)
父と子の対話に寄せて 宮城まり子
■畠山義郎作詞 校歌等 楽譜
合川北小学校校歌
合川音頭
合川中学校校歌
ふるさと讃歌
大野台の里賛歌
■評論文
沢木隆子・詩と人生―鋭い感性と気品のリリシズム
逸見猶吉小論―現代詩の低迷から脱却
私の押切順三さん
柴田正夫小論―その凛性と孤高について
私のあんべ・ひでお
秋田とのつながり―詩人・小野連司
安西冬衛の二極面
戦争に消え去った高祖保という詩人
『日本無名詩集』解説―自伝的背景と群像
兄といもうと―宮沢賢治ととし子
解説
詩人を生き抜く〟北のデーモン 亀谷健樹
巨星墜ちることなし 磐城葦彦
東北の人びとと共に「無限ひとり旅」をする人 鈴木比佐雄
畠山義郎 年譜
作品年譜
作者のことば
編 註
■詩篇
無限のひとり旅
無限の空間を
砲弾のように飛ぶ破片
その姿が見える
日常とは違う
別世界を夢見る
自他の対話の絶えた世界
それは
生の祈りの果て
飛んでいるのは
何の破片でもない
私自身の全像なのだ
美しい花が見たい
長い冬の日々が続く
錯覚がつづく
雨雪でもよい
異常の空間に
焦がれるものは
地球の大気圏を辿ると
南北とか、東西とか限界が
ある
宇宙は限定に付き合わない
そこをさまようことは
限界に憧れた人間の住み難いところだ
その憧れの苦楽が
人間の進む道筋だった
索漠の日々
冬の季節から
圏外に飛び出した
ひとりはもともと
多数のなかのひとりで
贐の
一輪の花
一杯の水は
どこへ消えたか
本当の
ひとりが
宇宙をさまよう