詩選集シリーズ
お前の心を掬って私の心に通わす/河童よ何時までも牛久の街に住み続けて/世の中みんなが幸せであるように/見守っていて欲しい//菖蒲が葉を繁らせメダカが沢山泳いでいる/河童の村は春ですか 鰻に鯉に鯰など/跳ねて泳いで元気一杯ですか/春は一段と河童踊りで賑やかでしょう (詩「牛久沼」より)
解説文:工藤富貴子、大塚欽一、鈴木比佐雄 |
四六判/176頁/上製本 ISBN978-4-86435-075-4 C1092 ¥1500E |
定価:1,620円(税込) |
発売:2012年8月30日
【目次】
第一詩集『赤い花一輪咲きますよう』(一九八六年刊)より
白い墓標
みつばち
自殺者の墓
暮 景
寂 光
瞳について
部 屋
手の群れ
旅立ち
春の街
石 柱
赤い風船
逆 光
二 月
遠い瞳をして
秋によせて
輝く絵である為に
赤い実
虹の宇宙船
会 話
八 月
言葉よ腐葉土になれ
古里探しの旅人
大もの釣り
第二詩集『白い心象画』(一九九一年刊)より
白い心象画
白
尻切れとんぼのうた
丸い背を見せて
黙する言葉
セピアの田
深呼吸をする
刻の門
一月の樹
角ぐむ
細 胞
魔術師のように
再誕生
青葉切符
七月のめまい
かかわり
変 色
第三詩集『小さい花束』(一九九六年刊)より
すすきの穂は
切り倒されたみかんの木
ひゅうとんどう
おばあちゃんの死
私はこうなりたい
祝福の孫を待つ
初孫誕生
台所探検家 一才
分身(女の戦い)
父権模様
従 う
日本語慕情
故郷の祭りの頃
待 春
樹になって
私の六十年(やがて陶芸家)
第四詩集『刻をつなげて』(一九九九年刊)より
生活の楕円形に於いて
誕 生
魚 語
習作(デッサン)
草の街
さあ 召し上がれ
丸いということの(或る工芸展にて)
涯
刻をつなげて
花 冠
線香花火
発芽の刻
第五詩集『一本の樹木』(二〇〇三年刊)より
一本の樹木
みえない樹
森と海
森への道
詩の森
言葉の森
えぞ松は
擬 態
充足期
第六詩集『回游』(二〇〇四年刊)より
手 二題
1 無限への挑戦
2 永遠への求愛
アンテナになれみもざ
古里を移植する
メダカ
みのり
言葉の構築
抽象と心象
樹林散策
顔
歳 月
回 游
悲 哀
テ ロ
マグニチュード
小幸福論
第七詩集『風を抱く』(二〇〇四年刊)より
六十代は楕円球
白
内なる住人
笑いの効用
実りのころ
湿原に咲く
言葉は虫 言葉は花
ある日のふたり
美しく老いる友
私だけの宗教
死 〈詩〉
母
まるい
青空みたいな会話がしたい
水のこころ
七十歳の所見
第八詩集『白い闇』(二〇一一年刊)より
ワイン
つぶらなもの
蝶のように
漁 る
牛久沼
草
草取りをしたくなる
重い荷物
赤と黒
秘そむ
白い闇
死を飼いならす
永訣の時
デスマスク
とんぼ
第九詩集『つれづれ想』(二〇一二年刊)より
種 苗
眠れぬ
鬼哭六十年
一枚の絵
綯い交ぜ
白い宴
喜寿の抵抗
ここまで来た
八十一歳の呟き
万歩計
裂き織り
旅(九寨溝・光竜)
汲 む
待ちもうけ
鈍感力とは
終焉考
いのちを泣く
風 景
老夫婦夜話
地球が危ない
絶滅と創造
未収録・少年少女詩篇
ポスト
ボク「りょう」
カマキリと拓磨とおばあちゃん
蜜蜂とりょうちゃん
お手紙
花びらころころ
風さんとあそぼ
もう一人の私
木と話す
ボク達 人間なんだ
おおいぬのふぐり
言の葉料理
でもね先生
エッセイ
彼 岸
諦念的悟り
遊 び
幻の泉を
解 説
詩に魅入られた人 工藤 富貴子
〈ものおもふ〉魂の詩的遍歴 大塚 欽一
牛久沼の岸辺で白の想像力を書き記す人
鈴木 比佐雄
略 歴
詩篇
「白い闇」
文章を書いていると闇に閉ざされる
白紙の中から立ちのぼって
頭内を白い闇に占領され
麻痺を起こして子供っぽく赤い舌を出す
本を読んでいると
透明な闇に取り囲まれる
筋道に立ちはだかって
向こうの景色を靄の中に隠してしまう
忘れっぽくなったり
思い出せなくなったり
白い闇はまだ前方にいるから
懸命になればなる程思い知らされる
名前も顔も覚えたつもりが
いつか消え何処かに紛れ出てこない
物忘れも 春霞か夜霧か
心地よくたなびいているのがいい
たなびく もやう つつむ かくす わすれる
何と優しい言葉だろう
年齢を重ねて味わう言葉だから
かろやかに指先に結び付けている