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加賀乙彦 散文詩集
『虚無から魂の洞察へ ―長編小説『宣告』『湿原』抄』
加賀乙彦氏は他家雄の内面を描く際にキリスト教の神父が避けていた「虚無」に向き合いその問いを深めていく。それはある意味でニーチェのニヒリズムの哲学への激烈な問いと重なっているかのようだ。しかし加賀氏は神の死ではなく神の再生を熱烈に「宣告」しようと願ったのだろう。国家は死刑囚に「宣告」をして死刑を継続しているが、他家雄を含めた死刑囚の悲劇的な経験から学ぶべきことは数多くあると告げる。(鈴木比佐雄 解説より)
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解説:鈴木比佐雄/宮川達二 |
46判/320頁/並製本 ISBN978-4-86435-478-3 C0092 |
定価:1,980円(税込) |
発売:2021年11月11日
目次
Ⅰ部 小説『宣告』抄 (鈴木比佐雄選)
第一章 春の吹雪
1 楠本他家雄の部屋 / 2 安藤修吉のチューリップ / 3 大田長助の発作 / 4 楠本他家雄のめまい / 5 他家雄の死者の目 / 6 神への愛か、人民への愛か / 7 砂田市松の後悔 / 8 おれは落ちていく
第二章 むこう側
1 ガンゼル症候群 / 2 死刑という刑罰 / 3 志村なつよの「あめふりおつきさん」 / 4 なつよの「すばらしい旅行」 / 5 長助の違憲訴訟 / 6 砂田の遺体提供 / 7 砂田の文鳥を長助へ / 8 長助の神話狂 / 9 安藤の「死の恐怖」 / 10 他家雄の「恥辱こそが義務」
第三章 悪について
1 他家雄の殺意 / 2 兄の殺意と母への嫌悪 / 3 花を食べる宮脇美納 / 4 剣山からの墜落 / 5 悪の楽しみ / 6 暗黒の宗教 / 7 悪夢の世界 / 8 崖淵に立った
第四章 涙の革袋
1 ショーム神父の『砂漠の水』 / 2 滝先生の助言 / 3 私はイエスと一体となる /
4 近木の虚無について / 5 唐沢の「隠された悪」
第五章 死者の舟
1 玉置恵津子の「カロンの呼び声」 / 2 古畑博士の鑑定 / 3 垣内のとこしえの命 / 4 他家雄の墜落感覚 / 5 虻川教授の『拘禁状況の精神病理』 / 6 死神がこの扉を開く / 7 唐沢の「でっかくやる」
第六章 光る花
1 『神の痛みの神学』 / 2 「光る花ですよ」 / 3 「小鳥に化身して」
第七章 裸の者
1 執行宣告 / 2 明日の朝 / 3 「死を迎え撃つ」 / 4 次は誰か / 5 「お母さん、肩かして」 / 6 「人間とは全くわからない」 / 7 透明な湯の中で / 8 「幸福を探すんですよ」 / 9 ロープが一本の棒となって
Ⅱ部 小説『湿原』抄 (宮川達二選)
第1章 指
1 群衆 / 2 学生 / 3 再犯防止 / 4 爆破事件調査
第2章 雨
1 池端和香子 / 2 喫茶店 / 3 刑務所 / 4 風蓮湖 / 5 精神病院 / 6 秘密
第3章 原野
1 天地 / 2 爆破実験 / 3 葉書 / 4 死の家の記録
第4章 塔
1 同志 / 2 脱院 / 3 闇の奥 / 4 鉄格子 / 5 増幅
第5章 流氷
1 突然の宣告 / 2 流氷 / 3 凍裂 / 4 蓮の葉氷 / 5 神
第6章 闇
1 逮捕 / 2 共犯 / 3 取り調べ / 4 事実の創作 / 5 自供 / 6 モーツァルト /
7 黙秘
第7章 壁
1 初公判 / 2 監獄 / 3 五十歳 / 4 開廷 / 5 無 / 6 神に祈る / 7 死刑判決
第8章 向日葵
1 精神病院 / 2 水野陽子 / 3 松田教授 / 4 清楚
第9章 星
1 死刑囚 / 2 アリバイ / 3 無辜の民 / 4 星 / 5 私は君のために書く
第10章 寒郷
1 寒村 / 2 春国岱 / 3 家出 / 4 東京へ / 5 兵隊検査
第11章 泥濘
1 大陸 / 2 江田竹子 / 3 仮釈放 / 4 敗戦 / 5 聖書
第12章 門
1 横須賀線爆破犯人 / 2 告白 / 3 ベートーヴェン / 4 アリバイ / 5 無罪 /
6 別れの手紙
第13章 春の氷
1 罪なき者 / 2 洗礼 / 3 無罪確定 / 4 春の音 / 5 湿原 / 6 自由存す
解説 鈴木比佐雄
解説 宮川達二
あとがきに代えて 加賀乙彦