書籍一覧 新刊
坂本麦彦 詩集
『漏れどき』
坂本氏は身近な場所から異次元の入り口を見いだして、想像力で古風な言葉に新たな息吹を吹き込んでいく。そんな様々な存在が重層的に動き始め、五感と霊感を駆使した力動的な言葉遣いと、それを積み重ねて三十篇にしてしまう文体の魅力が坂本氏の特徴だろう。(鈴木比佐雄 解説文より)
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解説:鈴木比佐雄 |
A5判/128頁/並製本 ISBN978-4-86435-465-3 C1092 |
定価:1,650円(税込) |
発売:2020年12月2日
目次
Ⅰ 春
焚き火に誘ったが 去ってしまった
孫は今 冬か春か 夕方か夜かで悩む
節分の夜が深くなっていた
僥倖に戸惑っていた
踏青してみた
夢で朝女に囁いた
五月五日を俯瞰していた
Ⅱ 夏
孫は今日 学校へ行かなかった
ふと思い出していた
ダンゴムシになりかけていた
風待月に しゃがんでいた
北枕で寝ている
七夕だったのかもしれない
玉の緒に縋る人に添うひとがいた
Ⅲ 秋
帚木を見ていた
他人の自己視幻覚を辿っていた
自閉の子が月に こだわっている
夜明けの晩を入れていた
阿呆陀羅経に縋るときもあった
鬱を揶揄したこともあった
漏れどき
うつけ者は愛おしい
神がいない月に祈る人がいる
深い秋がここまで来てしまった
思い出が尻の穴に残っていた
Ⅳ 冬
冬 短日の外に出ていた
今日は 昨日そして明日だった
冬つごもりに酩酊していた
猫の声に泣けた
氷柱を想った
解説 鈴木比佐雄
あとがき