句集・歌集
安井高志 歌集
『サトゥルヌス菓子店』
『サトゥルヌス菓子店』なる集名はいかにも彼らしい。「サトゥルヌス」も「菓子」もすぐれて多様、多面、多形的であり、その両者のマッチングの先には、限りない展開が生成されるのだから。サトゥルヌスの周辺は、ローマ神話中最大の魔境であり、時の神また農耕神にして子を食う神、そのありようは多様、多面、多形を極める。他方、あまたある店舗のなかでも燦然たる猥雑を抱える菓子店ほど目くるめくものはない。このありようは、この一連にとどまらず、いや、本集のみにもとどまらず、彼の人生の主要部の基調モードでさえあった。(依田仁美「解説」より)
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解説:依田仁美/原詩夏至/清水らくは |
46判/256頁/並製本 ISBN978-4-86435-340-3 C1092 |
定価:1,650円(税込) |
発売:2018年6月7日
目次
Ⅰ
あかいひとは逝ってしまった
手帳を捨てていかないように
眼病
午前二時のライナス
噓よりも軽いもの ―コラボレーション絵画+短歌
水底弔歌
Ⅱ
失声症のアンドロイド
消えた題名
聖体拝領
少年の影
白いサカナ
窒息の詩学 ―将棋短歌
ぐうちょきぱあ
ぼうけんのしょ
もしディス(もしもディストピアで短歌を詠んだら)
明るい廃墟 ―なにもかもが作り物の街幕張新都心へ
Ⅲ
ぬるい三月
貝の音
ボーイソプラノ
やわらかく焼けろ
つめたいひかり、しずかなひかり、
透きとおる足
水にしずんだ町
ウォーターフロント
蒸発していく月
珈琲メイカーコンプレックス
戸をたたく霧
マルボロメンソールライト8mg
サトゥルヌス菓子店
銀色の街
Ⅳ
鳥をはなつ少年
万華鏡の夢
滑走路
標本少女
棄てられた惑星
そばの根の赤さ
あきれるほどの花束を
まっしろな詩集
科学者のためいき
ジェイルハウスロック
さびしみの熱量
プリマ・マテリア
藍銅鉱をくだく男
深夜放送
マチ針を刺す
8bit
那由他まで
そうして二度と
とうめいな存在
解説 概念との対話が放つ光芒 依田仁美
海底の雪、しずかな雨 原詩夏至
彼に触れれば 清水らくは
謝辞 安井佐代子