石炭袋新書評論集
前世紀後半から、世界的な文学の主流は、多元文化時代を迎え、もはや西欧一元生ではなく、いわゆる「フリンジ(周辺、という意味)」の国々に拡散している。
(「多元文化受容とポスト・モダニズム」より)
解説文:石川逸子、郡山直、鈴木比佐雄 |
A5サイズ 382頁 ソフトカバー |
定価:2,160円(税込) |
発売:2008年8月6日
【目次】
◆第Ⅰ章 多元文化の実践詩考
多元文化受容とポスト・モダニズム/「現代詩」は難解か/堀田孝一『匂う土』とボルヘス/韓国の詩と日本の詩/「抵抗する叙情」/沖縄からのメッセージ/沖縄旅行の思い出―多元性と独自性そして独立への道/マイノリティの詩観と「女と国家」/私の現代アイルランド詩の翻訳について/二〇〇六年度イェイツ・サマー・スクールに参加して/火の国の女の情熱/あるネパールの詩とホイットマン/ネパールの旅から/日本におけるポストモダンへのワン・モア・ステップ/ロマン主義的ホイットマンと日本の前衛詩/二〇〇五年度世界詩人会議報告(於・ロサンジェルス)―マイノリティと愛と平和とそしてダンスと/リトル・トーキョーへの道/アメリカインディアン博物館訪問/現在の日本の詩とドリン・ポーパの詩/三・一の会公演・李盤作『その日、その日にこそ』/短詩の可能性と若く跳ねる詩語/『在日コリアン詩選集』受賞の意味/ソウル第二回「韓・日詩の祝祭」報告/「第三回日・韓詩の祝祭」報告/台湾での印象記/多元文化とマイノリティへのまなざし/日本人による英語の短詩/スペイン・ヴィゴでの「カストロ記念国際女性文学者会議」報告/スイス「文学者の家」での一ヶ月/二〇〇七年度ALTA・アメリカ翻訳者協会での短歌の歌唱/『続現代日本生活語詩集』について/イタリアからの平和のメッセージ
◆第Ⅱ章 理想の自然と異郷のふるさと
ヘルダーリンとハイデッガー/ドイツでの思い出/「伝統」と「革新」/ワーズワース『叙情民謡集』における叙情/「故郷喪失」と「ふるさとハンティング」/テロと愛と平和とナショナリズム/「イニスフリー湖島」の思い出/自然と生命と美と喜び/「宇宙と自然と生命の歌」/種まきと緑と収穫の詩/偉大なる国家の栄光と遊牧民の伝統と/モンゴルでの思い出/風と草木と鳥と空と/柿の実の赤/花のコルドバ/反逆としての「朦朧詩」/スイスと自然と薔薇と詩と
◆第Ⅲ章 周辺(フリンジ)の詩人たち
インドの詩人 アフターブ・セットの詩(1)~(8)/アイルランドの詩人 ジェイムズ・フェントン(1)~(3)/オーストラリアの詩 ヘンリー・ローソン/オーストラリアの詩 モリー・ケネリー/オーストラリアの詩 A・B・パターソン
◆第Ⅳ章 多元的な日本文化
鳴海英吉と演歌的叙情/「歌」の復権/追悼―木島始とその仕事/木島始編・野村修訳『ブレヒト詩集』について/口語体会話とライト・ポエムの可能性/マイノリティとしての私の詩/岡本かの子の印象/樋口一葉の短歌と「狂」の思想/ジャック・ケアルックの俳句/木津川昭夫『詩と遊行』/日常性と想像力/太宰治『ヴィヨンの妻』について/井上靖「風に鳴りたい」について/信濃町教会と石原吉郎/老人問題と日本の現代詩/酒井力『白い記憶』を俯瞰して―「死」をいかに詩にとどめるか/エドワード・ムーア脚本・文化座上演『たつのおとしご亭』について/串田和美演出・サミュエル・ベケット『ゴドーを待ちながら』/情熱を失った現在の日本への挑戦
第Ⅴ章 平和と原爆詩運動
芸術としての戦争詩/日本初の完全英語版アンソロジー『戦争と平和詩集』/核廃絶に向けて・内と外からの「ヒロシマ・ナガサキ」/池山吉彬『都市の記憶』/長津功三良『影たちの墓碑銘』/御庄博実
『原郷』/スイスにおける「原爆体験」/『原爆詩 一八一人集』について/東大論争四十周年・「開かれた大学」への道/御庄博実氏「核はと人間は共存できない」/テレシンカ女史からの手紙と詩
◆あとがき
◆初出一覧
◆略歴
【一部を紹介】
◆「お勉強詩」も、あっていい。必死で勉強して書く詩もあっていい。だが、私の言いたいことは、現代詩がお勉強詩といつまでもそのままイコールでは困る、ということである。(第Ⅰ章より)
◆日本は、永遠にモダニズムにとどまるのだろうか?世界的文化状況はもはや更に新しい方向へと流れ始めている。(第Ⅳ章より)
◆現代の日本では、戦争詩は「芸術」と十中八九考えてもらえないのではないか?(第Ⅴ章より)