岡田惠美子詩集
『露地にはぐれて』
闇の中を彷徨っても/闇から脱け出そうとあがく心/それが救いなのだと/自ら気付く事が愛なのだと/うっすらほほえまれて/振り向いて下さるだろう
(詩「開けゴマ」より)
栞解説:鈴木比佐雄 |
A5判/176頁/上製本 |
定価:2,160円(税込) |
発売:2011年3月8日
【目次】
一章 露地にはぐれて
諸葛八卦村
西 施
ソウルの朝
漢 江
かささぎ
パンソリ
水原華城
二章 聖ヨハネ教会廃墟にて
開けゴマ
深き眠りを
あのパンが食べたい
「ヨナの伝説」考
キベレさま
トプカプ宮にて
アタチュルク廟にて
エフェソス幻想
奇 蹟
聖ヨハネ教会廃墟にて
三章 夕日の聖母子像
夕日の聖母子像
サンタ・キアーラの春
サクリ教会
アレオパゴスの丘
ネランジェ
パルテノン神殿
ケンクレア港
コリント運河
コリント遺跡にて
夜の運河
四章 ディスタンス(距離)
ディスタンス(距離)
食 卓
説く男
硝子のユニコーン
幻 視
月
幻の城
画廊にて
傍観者
津和野
鹿瀬まで
一葉の写真から
五章 余剰のいのち
同行二人
見えない地図
病院の窓
杖
悔 い
渇 く
風のロンド H・Sさんに捧ぐ
からすうり S・Yさんに―。
白芙蓉の人 S・Uさん追悼
晩夏そして挽歌 ―Y・Nさんの墓碑銘―
余剰のいのち
あとがき
略 歴
【詩篇】
「開けゴマ」
開けゴマ
呪文を知ったアリババは
盗賊の庫を開いて豊かに暮した
けれどそれは単に
盗賊の上前をはねただけ
それで幸せになれたのか
アラビアンナイトは教えてくれない
私達も誕れる時
神様から何かの呪文を授かってきた
そして開けるのだろう
叡知とか
勇気とか
寛容とか
一つ一つの宝の倉を
人生の倉は沢山あるので
間違った所を開けてしまう事もある
殺戮とか
虚偽とか
悲哀の扉を
そんな時イエス様は
何を用意して下さるだろう
優しい慰めなど
期待しない方がいい
犯した罪に苦しむだけ苦しみ
その先に見えてきた僅かな光
それに気付くのが幸せなのだと
闇の中を彷徨っても
闇から脱け出そうとあがく心
それが救いなのだと
自ら気付く事が愛なのだと
うっすらほほえまれて
振り向いて下さるだろう