詩選集シリーズ
『若松丈太郎詩選集一三〇篇』
千年むかしの光をうかべ北上川は流れる/この橋をわたり八キロ離れた高等学校へ通学したことがある/桜木橋に自転車をとめ川風をうける/岸の木だちが川風にそよぐ/風のように過ぎるものがある/あいつか/橋上に立つとここは全宇宙の中心のように思えるのだ(詩篇「北上川」より)
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解説:三谷晃一、石川逸子、鈴木比佐雄 |
四六判/232頁/上製本 ISBN978-4-86435-144-7 C1092 ¥1500E |
定価:1,620円(税込) |
発売:2014年2月28日
【目次】
第一詩集『夜の森』(一九六一年刊)より
Ⅰ
恋びとのイマアジュ
鶴
Ⅱ
反逆の眼球
どこかで
もうひとつのおれ
崩 壊
貝の対話
Ⅲ
鉄山幻想
白い死
Ⅳ
馬
手を放すな・回転鐙から
音
内灘砂丘
Ⅴ
記 憶
夜の森 一
夜の森 二
夜の森 四
第二詩集『海のほうへ 海のほうから』(一九八七年刊)より
Ⅰ
海辺からのたより 一
海辺からのたより 二
海辺からのたより 三
海辺からのたより 四
海辺からのたより 五
海辺からのたより 六
海辺からのたより 七
海辺からのたより 八
海辺からのたより 九
海辺からのたより 十
海辺からのたより 十一
九艘泊
Ⅱ
北狄 一
北狄 二
北狄 三
北狄 四
北狄 五
北狄 六
北狄 七
野の馬を追う
天明山
Ⅲ
恐 山
われらの森は北に
呪術的な八十一行の詩
Ⅳ
みんな帰りたがっている
炭化したパンのイメージ
右脇腹の痛み
ガ マ
十月の岸壁
夜の森 五
六歳の冬
サンザシ
第三詩集『若松丈太郎詩集』(一九九六年刊)より
望郷小詩 ―宮沢賢治による variations
水 沢
人首町
北上川
風のかたまりの夜
第四詩集『いくつもの川があって』(二〇〇〇年刊)より
来るはずだったものは
龍門石窟の老婆婆
傷口のほの暗いひかり
連詩 かなしみの土地
プロローグ ヨハネ黙示録
1 百年まえの蝶
2 五月のキエフに
3 風景を断ちきるもの
4 蘇生する悪霊
5 《死》に身を曝す
6 神隠しされた街
7 囚われ人たち
8 苦い水の流れ
9 白夜にねむる水惑星
エピローグ かなしみのかたち
いくつもの川があって
第五詩集『年賀状詩集』(二〇〇一年刊)より
一九九六年
一九九七年
一九九八年
一九九九年
二〇〇〇年
第六詩集『越境する霧』(二〇〇四年刊)より
やがて消え去る記憶
あるべきでないうつくしさ
死んでしまったおれに
■■■、■■、■■■。
万人坑遺址所懐
連詩 霧の向こうがわとこちらがわ
1 ジェラゾヴァ・ヴォーラの空
2 ゲットー英雄記念碑のレリーフ
3 監視塔のある世界
4 スーツケースの名前
5 霧の向こうがわ
6 けむりなのか霧なのか
7 コラール〈心よりわれこがれ望む〉
飛行機に向かって石を
シュメールの竪琴
ほんのわずかばかりの
第七詩集『峠のむこうと峠のこちら』(二〇〇七年刊)
五輪峠
人首川
向山 A
向山 B
束稲山
館下
重染寺
六日町 A
六日町 B
花綵(あるいは挽歌)
豊沢川
第八詩集『北緯37度25分の風とカナリア』(二〇一〇年刊)より
偏西風にまかせて
田の神をもてなす
暑湿の労に神をなやまし
恐れのなかに恐るべかりけるは
くそうず
天のうつわ
ほだれ様にまたがって
深い森の巨岩
そばつゆにどっさりのおろし
阿吽のむこう
左下り観音堂まえ午睡の夢
空飛ぶさざえ堂
かつみかつみと尋ねありきて
酔っぱらっただるま
村境の森の巨きな神人
不条理な死によう
鄙の都路隔て来て
そっぽをむいたしるべの観音
赤い渦状星雲
鼻取り地蔵の左脚
みなみ風吹く日
夢見る野の馬
詩集未収録詩篇
逃げる 戻る
町がメルトダウンしてしまった
ある海辺の小学校
子どもたちのまなざし
不条理な死が絶えない
籾米を秋の田に蒔く
飯崎の桜
萱浜の鯉のぼり
記憶と想像
解 説
稀に見る晴朗、堅固な批評精神 三谷 晃一
若松丈太郎詩選集に 石川 逸子
北狄の精神を問い続ける人 鈴木 比佐雄
後 書
略 歴
詩篇
「連詩 かなしみの土地」
わたしたちは世代を超えて苦しむことになるでしょう
―ウクライナ医学アカデミー放射線科学臨床医療研究所所長ウラディミール・ロマネンコ
プロローグ ヨハネ黙示録
その日と
その日につづく日々について
聖ヨハネは次のように予言した
たいまつのように燃えた大きな星が空から落ちてきた。
星は川の三分の一とその水源との上に落ちた。
星の名はニガヨモギと言って、
水の三分の一がニガヨモギのように苦くなった。
水が苦くなったため多くの人びとが死んだ。
チェルノブイリ国際学術調査センター主任
ウラディミール・シェロシタンは
かなしい町であるチェルノブイリへようこそ!
と私たちへの挨拶をはじめた
ニガヨモギを意味する東スラヴのことばで
名づけられたこの土地は
名づけられたときからかなしみの土地であったのか
一九八六年四月二十六日
チェルノブイリ原子力発電所四号炉爆発
この日と
この日につづく日々
多くの人びとが死に
多くの人びとが苦しんでいる さらに
多くの人びとが苦しみつづけねばならない