山本聖子詩集
『宇宙の舌』
遠い銀河で生まれたばかりの
ちいさなまたたきのように
庭のかたすみに きのこ
宇宙の舌がひそかにここをなめたのだろう
詩「つめたい舌」より
ちいさなまたたきのように
庭のかたすみに きのこ
宇宙の舌がひそかにここをなめたのだろう
詩「つめたい舌」より
栞解説文:鈴木比佐雄 |
A5判/128頁/上製本 ISBN978-4-903393-38-4 C1092 ¥2000E |
定価:2,160円(税込) |
発売:2008年11月23日
【目次】
第Ⅰ章 宇宙の舌
充溢
牙
友引
できもの
女たちの午後
中落ち
『盲導犬』からのシンメトリー
スネーク・ハウス
脚力
過去未来
The tongue
Gift
つめたい舌
楽園
ウインタースポーツ
足を蹴る
二十世紀ヶ丘戸山町一五〇番地
第Ⅱ章 カフカの棲む場所
家族deサーカス
アイス・アリーナ
とげの子
空の子ども
a stone
ほぼ 滝のように
カフカの棲む場所
足もと
わたしの病み方
五月晴
犬をまたぐ
雨期
隣人A
隣人D
まき餌
なくしたもの
住処
Reversible
ハイ・ジャンパーの夜
夜の犬
あとがき
略歴
「つめたい舌」
〈動くもの〉と呼ばれることは
わたしにふさわしかったのか
遠い銀河で生まれたばかりの
ちいさなまたたきのように
庭のかたすみに きのこ
宇宙の舌がひそかにここをなめたのだろう
哲学する傘の傾斜
シャベルを握ってはみたものの
見つめることから感染がはじまる
胞子の誕生に 呼吸までしりごみして
わたしの根も土を求めていた
きのこは星のはやさで遠ざかり
わたしの時間だけが
尾をひいて追いはじめる
物理とは こんなふうに
とうとつに理解をもたらすもの
あしもとで生誕をくりかえす
光年のまたたき
見飽きたときわたしは ざくりと
鋭利な鉱物でちいさな輪廻を断ち切った
宇宙はたしかに 膨張をつづけている
星のはやさを超え
夜 わたしの眠りの庭に
空間移動する きのこ
星間のはてしない闇から 横たわるわたしに
無言で降りそそがれるものたち
まだ見られている けれど
飽きたらとうとつに降りおろされる
つめたいシャベルの 物理的な傾き