コールサックシリーズ

見上 司詩集
一遇』
見上さんの詩を読んでいると、とても温かく率直で心が洗われてくる。そして地球に暮らす人間もその他の生き物も含めて、この世界に存在するものに対して慈しむ心が湧いてきた。それはきっと見上さんが、出逢った人びとたちに誠実に向き合っているからに違いない。 (解説・鈴木比佐雄 より)

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栞解説文:鈴木比佐雄
A5判/160頁/ソフトカバー ISBN978-4-86435-133-1 C1092 ¥2000E
定価:2,160円(税込)

見上 司詩集『一遇』

発売:2013年12月5日



【目次】


第一章 一 遇

一 遇 ―百武すい星に寄せて―
未来に ふいに ―火星大接近の夜―
グリシン ―青い地球に―
繁 栄
フェアリ
I Will Always Love You
キセキ ―はくちょう座ケプラー22bに―

第二章 やさしき墓標群

虫をにがす話
やさしき墓標群
青い詩集   
蛇 
大 蛙
「ニルス」
マタイ

第三章 ジュリエット

シドニーの片隅で
からっぽだった ぼくの部屋に……
ジュリエット もしくはバルダロの恋人たち
ある夜の話 
夫婦げんかの話

第四章 二 人

「はる」 ―菜乃花に―
寓話として 
二人仲よし 
ラーメンバスの話
花いっぱいの話
「冬の物語」 
優雅な線描画
素朴な感嘆符
七月の四十五分
二 人   

第五章 「ただいちど」

遠い記憶 ―海にて 
アンモナイトの話 ―息子に
NEMO ~愛すべき小さな魚の物語から~
たわいない問い
「ただいちど」 ―入学式に
ニ ス ―夏休みの終わりの日に
九月のカブト虫

あとがき
略 歴



「一 遇 ―百武すい星に寄せて―」



二万年前、
そのまた二万年前にも、
やはりだれかがあの星を見ていたのだろうか。
あるいは鳥や獣や森の木々、
(すべての生き物の祖先たちが……)

気の遠くなるような はるかな時間と空間を駆けて、
彼はぼくらの世界にやって来たのだ。
(ああ、ぼくらもみな本当は、
 万に一つも出会いがたい
 はるかな存在だったのではないか。
 なのにこうして、
 愛し合ったり、悲しみを分かち合ったりする。)

あの尾はじつは尾ではなく、
太陽風に吹かれて噴き出す光の帯だという。
そしてぼくらの中にも、
ああした燃えながら閃光する
何かがないか、
すべての出会い、別れるものに優しく
たむける愛のような。

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