詩選集シリーズ
『岩本健詩選集①一五〇篇(一九七六~一九八一)』
星は石塊だと、誰が言った?/ぼくが言った。しかし 星は/ぼくの心の おく底で いつ/も寂しく 光り続けていた。/そして、そんな光に支えられ/て、ぼくは 生きのびてきた。 (詩篇「石塊の星」より)
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解説:佐相憲一、原圭治、 鈴木比佐雄 |
四六判/192頁/上製本 ISBN978-4-86435-132-4 C1092 ¥1500E |
定価:1,620円(税込) |
発売:2013年11月26日
【目次】
第一詩集『人の木』(一九七六年)より
山田万作
骸 骨
冠放れ
拝文所
礼
群の掟
裏の部屋
背 中
人の木
浪
花
動詞「泣く」
8月6日
第二詩集『水の神』(一九七六年)より
山峡の路
袋
おいで・おいで
火
水の神
星の唄
雪の唄
三国峠
恵光童女
古自転車
第三詩集『泥河のほとり』(一九七七年)より
望みの唄
泥河のほとり
木のほら穴
コンクリイトの手
丘
裸の丘
遺 骨
けむり
ねずみ
顔
鳥
あかんべ
第四詩集『あかんぼう』(一九七七年)より
死んでしまったあかんぼう
あかんぼう 御誕生
あかんぼうのおむつ
人間でないと
5段階評定
球型の空
星の指輪
石塊の星
星の唄抄
汚れた犬
第五詩集『電車』(一九七七年)より
まばたきもしない目で
赤いシグナル
東谷玄次
大林文子
月見草
警 鐘
A市から擬似A市に
第六詩集『にがい塩』(一九七八年)より
にがい塩
石と砂と
木 槌
小さな花
切符販売機
友来る
宗教屋
狐
一の宮
石
獣
老 衰
老いてなお
言 葉
自画像
小さい鬼
まいまいこんこん
白 菊
顔
ラグビー球
悲 鳴
象
流星の季節を前に
細 道
雪国の詩
第七詩集『蟹』(一九七八年)より
枯葉たち
アカシア
矩形の顔
舟
新京極
夜明け前
蟹と横這い
蟹と耳
第八詩集『群像』(一九七九年)より
風に吹かれて
小学校5年生
椅 子
岩の神々
冥土閉塞
硝子の器
行 地
第九詩集『天空』(一九七九年)より
天 空
掌
犬 1
犬 2
とんぼ
馬 面
牛 面
羊 面
帰ります
第十詩集『雪野原にて』(一九八〇年)より
鬼
天 使 1
天使 2
半面阿呆
ぼくと机と
風景画
壁
雪野原にて
赤裸々の神
第十一詩集『習作』(一九八〇年)より
偶 成
服
風景画
蘭 花
つきあたる
呆助と棒助
天使の一週間
ゴキブリ氏危篤
笑ってはいけない
破 滅
舌
告 別
金属の鎖
古雪抄
ゴムの木
ピテカントロプス
大 蚊
鼠
半分道化
夜明け
魚と阿呆と
ズンベラボウ
第十二詩集『もしかして』(一九八一年)より
もしかして
獣が街にやってくる
精神医と私
短詩抄
苔の花
正面みたのは?
バラの花
赤い獣
腸
蟬
老人と枯木と
飛んでいく
古画抄
犬
河 馬
昆虫たち
栗 鼠
古代エビ
散 文
十二冊の詩集の「あとがき」から(抜粋)
解説・詩人論
胸に石塊の星を灯し続ける人の鋭いユーモア 佐相 憲一
岩本健さんの詩と生の軌跡 原 圭治
魂のリアリズムを詩作する人 鈴木 比佐雄
略 歴
回 想
詩篇
「人の木」
人の木。
木は穴だらけ。
立枯れ。
そんな木の
そんな林。
人の木で
直立しているものは
一本もない。
まがりくねり
いじけて
苦悶の表情で
手である枝を
虚空にむかって
キインと伸ばしている。
そんな木の
そんな林に
葉が散りこぼれている。
葉は目
葉は舌
葉は陰茎
葉は耳
葉は鼻
病んで地に落ちた
唇の葉
掌の葉
その他さまざまの葉
葉を踏んで
そんな木の
そんな林を
歩いていく
「陰々たり 暗々たり」
ぼくはつぶやく。
つぶやいたところで
そんな木の
そんな林は
すべての葉を
ふるい落として
晩秋の光に
がらんとして
明るい。
木の足である根は
大地の岩を把む
岩は氷の巨大な塊
瘦せて凍えた
人の木は
絶望のあまり
梢より
火を吐く
「陰々たり 暗々たり」
阿呆のぼくは
その ひとつ覚えの言葉を
繰返しながら
限りもない林を
限りもなく歩いて
いくのか