洞彰一郎詩集
『遠花火』
ことしも/遠くで上がる花火を/ひとりで見ているのです/花火の好きだった/あなたの部屋の窓から/あの日と同じ夜空を尋ね(序詩「遠花火」より)
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四六判/128頁/上製本 ISBN978-4-86435-127-0 C1092 ¥1500E |
定価:1,620円(税込) |
発売:2013年9月20日
【目次】
序詩 遠花火
一章 追想
追想
玩具箱
父
母
自鳴琴
紅雀
虫
遊離魂
二章 春を待つ
春を待つ
彼岸会
しだれ桜
優曇華
暮秋
老木に花
盆の夕
鞄のなか
小春日和
白いベッド
怠惰な冬
三章 星屑
星屑
うさぎ
Clair de Lune
もしも
水琴窟
博物館
森にしとしと
楽しき貧しさ
狐
残響
四章 空葬
空葬
死刑囚
死者との語らい
つひにゆく道
廃炉
姨捨山
箸
来世
ラシアン・ルーレット
散歩道
柩をつくる男
掟
五章 夢ひとよ
夢ひとよ
ある墓碑
海に還る
ピアノの詩人
The Book of Tea
あとがき
略歴
詩篇
「星屑」
昔 楕円体をした星に
生物が存在していた
いつも生と死を繰り返し
いまは ただ
そんな痕跡もなく
静謐な天体にとどまっている
それにしても
生物が滅んだ跡の星の
なんとまた
生き生きと瞬いていることか
「空葬」
旅の途に倒れた
身もと不明の行旅死亡人
彼は漁夫だったかもしれないし
あるいは明日の
私自身かもしれない
やがて夕もやのかかるころ
無縁墓地に葬られる
旅人を待つひとは老い
その日 海辺の村では
空葬があるという
骨壺に納める骨も帰らぬまま……
海は夕なぎ
見知らぬ子供が
浜辺で貝がらを拾い
森では疲れた啄木鳥が
空の柩をつついている