松本高直詩集
『永遠の空腹』
淡雪は名残の表に散ればいい/挙句の五文字の上にあいた/虫食いの穴/あわれとは流刑地の桜さ//穴のむこうは見えないけれど/きっと/永遠の空腹に/じっと耐えている/詩神がいるよ
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栞解説:鈴木比佐雄 |
A5判/112頁/上製本 ISBN978-4-86435-120-1 C1092 ¥2000E |
定価:2,160円(税込) |
発売:2013年8月6日
【目次】
Ⅰ 春の階調
春の階調
春の階調
誰も寝てはならぬ
春 望
ある晴れた日に
リリカルに
抒情小曲
秋 日
冬 至
Ⅱ 時の坂
時の坂
そは彼の人か
漏 箭
抒情の帆
海 境
既視の空
半 影
影を搏つ
Ⅲ 童謡
風の中の羽のように
紫陽花のうた
童 謡
鳥の歌
恋 唄
夜の歌
エチュード
風のソナチネ
あとがき
略歴
初出覚書
【詩篇紹介】
「誰も寝てはならぬ」
憂鬱なのは
これは
春のせいじゃないね
揚げ雲雀の声が
未生の空から聞こえてきても
耳は
和まないんだ
鳥影は地上まで届かない
だから
あわてて歩き回ると
前方の視界から崩れてゆく
戯れに
砂消しゴムで削った
太陽は
鄙びた教会の
フレスコ画の中で輝き続けているという
野外舞台の袖では
綾取りしかできない
デモクラットがいて
失意の風車を回しているという
洋梨の形をした
万華鏡の中で移り変わる人生は
覗くたびに
誤植だらけで美しいんだ
淡雪は名残の表に散ればいい
挙句の五文字の上にあいた
虫食いの穴
あわれとは流刑地の桜さ
穴のむこうは見えないけれど
きっと
永遠の空腹に
じっと耐えている
詩神がいるよ