吉田博子詩画集
『聖火を翳して』
生きて此処に在る喜び/詩人はただ「ありがとう」という/それから一枚一枚 心そのままの/純な絵を渡す そのやさしさ
―詩人・小柳玲子(帯文より)
栞解説:鈴木比佐雄 |
A4変形判/136頁/上製本 |
定価:2,160円(税込) |
発売:2011年3月31日
【目次】
Ⅰ章 聖火を翳して
聖火を翳して
生まれ死ぬこと
森はわたしの家族
アブドゥーラ―砂を握りしめて
虚構のサボテン
午前の空に
言葉もかわすことなく
あの夜の港
灯台
いじめないよ
いつまでも青く
なぜわたしはここに生きているのか
Ⅱ章 母樹を離れて
母樹を離れて
もう一人の私
もらわれっ子
なにごともなく
疲れた耳に届く声
いざ
自らを織る
ミニトマト
?―はてなの木
香木
やさしい鬼
愛しい左半身
自分にたちかえる時
川面の遊人
Ⅲ章 絵画集
仏像など
自画像と人物
花と生きもの
落葉
千年生きる
吉田貴博の絵画
あとがき
略歴
【詩篇紹介】
「聖火を翳して」
久しぶりにたずねた娘のアパートは
入口にも蔓バラやびわや
夏に咲いた朝顔の蔓や種
ゆりの長い穂のような種が
ニョキ ニョキからんで
鬱蒼としている
曾てかわいがっていた
あひるのガー子ちゃんの
死んだ後のゲージも
糞だらけでそのまま
地面には花びらを集めたなまずの墓や
スッポンの墓
これは足に障害をもっていた捨てネコの墓
この廃園に雨が降ってきた
入口をはいると
音もせず静かだ
娘や孫が愛しんだ命が
わたしの内の野原に
ろうそくの灯をともす
一つ 二つ 三つ
でも決してゆるがない愛する芯を
聖火のように翳して―