矢口以文詩集
『詩ではないかもしれないが、どうしてもいっておきたいこと』
どんな気持ちでこの爆弾を作ったのか
出来上がった時 仲間と一緒に祝杯あげたのか
土に潜んでいた子爆弾が突然飛び上がり
遊んでいた子供に食らいついて
両足をもぎ取った報道写真を
どんな気持ちで眺めたのか
(詩「クラスター爆弾を作った科学者に」より)
栞解説:鈴木比佐雄 |
A5判/224頁/ソフトカバー |
定価:2,160円(税込) |
発売:2010年11月25日
【目次】
一 戦争中僕らの町に海軍航空基地があった
爆弾穴
秋の初め頃だった
ある戦友会で
一糸乱れず
一九四三年の学徒出陣
塗りつぶした
三光作戦
アリたちの戦い
忠一おじさん
アイヌの紳士
アイヌの兵隊
もう種を蒔いている
羊たち
アメリカ
浮かれ騒ぐアメリカ
ジョンソン
詩ではないかもしれないが、
どうしても言っておきたいこと
国民大合唱が始まりそうだ
シトロン
クラスター爆弾を作った科学者に
ある政治家の話
ある学生
NHKの戦争実況放送
「かぐや」から見た地球
二 神の心
私の作品
小 道
昔のかかし
ハルゼミ
クワガタムシ
いなないた!
庭の虫
私の家族
なぜ詩を書くの?
暗がりから出てきた男
かくれんぼう
重慶に近い南充で
孫とおじいちゃん
クリスチャン
アレン・ネルソンさん
元従軍慰安婦の話
アーミッシュの友人
三途の川の渡し守
ついて行かなかった人の話
終わりの日々
アブラハムの子孫
神の心
ヘブロンのアン
旅立ち
木村謙二先生に
まことの愛国とは
三 故郷の言葉で
東京弁
タモズ
ぶんず
一本杉
昔の隣のおばさん
ようすけ爺つぁん
女川町のおばあちゃんの話
プロポーズ
少女
井戸端で
四 詩と散文
女と兵隊
無防備都市
「判決の夜」とその背景
中国での詩の朗読
どうしますか?
―非暴力平和主義キリスト教の立場をめぐって―
あとがき
略 歴
【詩篇紹介】
クラスター爆弾を作った科学者に
あなたはどんなふうに育てられたのか
どんなふうに勉強したのか
どんなふうに研究したのか
どんなふうに生きてきたのか
どんな神を信じてきたのか
どんな人間関係を持っているのか
どんな恋愛をして
どんな結婚をしているのか
どんな夫なのか
子供がいるなら どんな父親なのか
どんな気持ちでこの爆弾を作ったのか
出来上がった時 仲間と一緒に祝杯あげたのか
土に潜んでいた子爆弾が突然飛び上がり
遊んでいた子供に食らいついて
両足をもぎ取った報道写真を
どんな気持ちで眺めたのか
何にも感じないで
コーヒーを飲んでいたのか
それともそんな写真は見ないで
もっと威力ある爆弾を作り出そうとしているのか
あなたは本当に母の胎から生まれ
愛されてきた存在なのか それとも
何かの分子が何かの弾みで結合して
たまたま 人の形になったものなのか
私にはあなたのことが分からない