根があって 大きい幹があって
枝は おんなじようなたしかさで
小学生の一群が
晴天に指をひろげるように
はたらく者の腕が五月の空を支えるように
(「けやき」より抜粋)
解説文:佐相憲一、くにさだきみ、鈴木比佐雄 |
四六判/224頁/上製本 |
定価:1,542円(税込) |
発売:2010年8月6日
【目次】
第一詩集『貧者の求愛』(一九五六年刊行)より
出 発 10
ある風景 10
商店街にて 12
門出をおもう風景 13
旧 友 14
愛情のバクダンのなる木を 15
少 女 16
第二詩集『けやきの絵』(一九六三年刊行)より
けやき 17
新生一箱 17
福雄くんのこと 18
シンちゃん 19
責任について 21
母 親 22
けやきの絵 22
握 手 23
石と意志 24
原爆資料館にて 25
第三詩集『教師の詩』(一九七七年刊行)より
運動会のキミガヨ 27
おかゆばら先生といねむり先生と代用教員 28
ある町 31
公 園 34
記 憶 ―あのころのこと 34
写 真 37
原爆資料館 38
芽のこぶし 40
わがふるさとのおばあさん 41
山の上にそびえていた松 43
第四詩集『絵になる風景』(一九八三年刊行)より
木の芽への思い 46
絵になる風景 46
新宿西口風景 47
佐渡原先生のこと 49
学校の屋上にあがると 50
チョウヘイ 51
わたしの墓参 54
原 発 54
子どものころの話 56
いたどり 57
鏡 58
第五詩集『わが家の庭』(一九九〇年刊行)より
わが家の庭 59
自然について 59
わが家の庭のけやきについて 60
ニュース 61
「戦争を語りつぐ」展 62
国会請願 63
キヨコの千羽鶴 64
ねぎを食べた話 67
庭の母子草 69
二十年ほおえみたたえて 70
おくさまのほおえみ 71
ピンク色のカーネーション 73
どうだんつつじ 73
みみずの風景 74
第七詩集『八月の幻覚』(一九九六年刊行)より
荒川の土手で 75
不安なとき 75
島の風景 76
傷 76
知 覧 77
怒りの素顔 79
テニアンの風景―鎮魂不戦の旅―に参加して 80
山手教会にて 84
八月の幻覚 86
五十年前のこと 88
あれから五十年逃げて生きのびた 90
沖縄へいってみたい 92
沖縄の少女 93
詩碑の前で 95
洞窟の骨 97
詩人でもあった五十嵐顕さん 98
第八詩集『日陰に咲く』(一九九八年刊行)より
初 夏 101
あいさつ 101
日陰に咲く 101
軒下の稲 102
初恋のひと 102
墓 参 103
母の骨 103
諫早湾その後 105
けやきの芽と枝とムツゴロウ 105
フェンスのアサガオ 106
くさり 106
日本の旗は 107
病 巣 107
三十二年の勝利 108
元日の朝 109
新幹線から見える富士山 111
鎮魂不戦の旅(1) 112
鎮魂不戦の旅(2) 116
第九詩集『皆既月食』(二〇〇一年刊行)より
白 浜 120
四十七年も前のこと 120
ふるさと 121
ふるさとの風景 123
いじめ 125
八百屋の前で 126
アメリカザリガニ 127
富士山と横田 127
戦後五十余年を生きて 128
二十一世紀の夜明け前 130
ざくろ 131
微笑のひと 131
風 化 132
皆既月食 133
第十詩集『孫娘とタンポポ』(二〇〇三年刊行)より
覚えた色 135
アフガンの女の子 136
あたらしい憲法のはなし 137
最近の情報 139
「広島・長崎の火」を永遠に灯す会 140
クラスター爆弾 140
孫娘とタンポポ 141
先生の手紙 142
第十一詩集『スイちゃんの対話』(二〇〇六年刊行)より
スイちゃんの対話 144
ひとりごと 144
会 話 145
へんな夢 146
病院の帰りに 147
納 骨 148
彼女の遺影 149
大久野島 149
第十二詩集『笑生ちゃん』(二〇〇八年刊行)より
笑生ちゃん 151
花 151
山茶花 152
富士街道と富士町 152
あたらしい浦島のはなし 153
山鳩の記憶 156
学徒動員のこと 157
学徒動員その後 159
玉音放送 ―ある老人の話 161
雨戸を開けると 161
桜前線 163
未収録詩篇
優希へ 163
コスモスと孫娘 165
九歳で死んだ孫娘 165
社会科見学 165
夾竹桃 166
富士山 167
宣 誓 167
原爆展 169
碑名の近くで 169
元安川 170
願いはひとつ 170
『原爆詩集』紹介 170
朝 173
【エッセイ】
ヒロシマ・そして戦後
―峠三吉に出会ったころ― 176
解説・詩人論
「にんげんをかえす、けやきの詩人」
佐相憲一 188
「山岡和範という詩人の資質」 くにさだきみ 196
「峠三吉の詩的精神を夏空に問い続ける人」
鈴木比佐雄 203
略 歴 216
詩篇を紹介
けやき
根があって 大きい幹があって
枝は おんなじようなたしかさで
小学生の一群が
晴天に指をひろげるように
はたらく者の腕が五月の空を支えるように
その枝々に主従はなく
太陽は 平等にいただくのだと
五月の空を支え
五月の晴天にひろがる
しげって風にそよぐ その葉のみどりも
その葉のやさしさも
太陽のかげにくもるものはない