高炯烈=著 李美子=訳
詩集『アジア詩行 ―今朝は、ウラジオストクで』
詩人はあることを言う
しかしだからすべての詩人は
いつも思ったままに詩が書けるようになるには
ひとつの布施をなさねばならない
詩にとって何の役にも立たない、無意識の贈りもの
詩からもっとも遠くにあるもの
(詩「ミャンマーの詩人のひと言」より)
栞解説:鈴木比佐雄 |
四六判/192頁/ソフトカバー |
定価:1,542円(税込) |
発売:2010年9月23日
【目次】
木の枝のリボンと油桃花―東京の李美子詩人に
あなたの眼の中には、そして―広島の長津功三良詩人に
世界平和遺産を通り過ぎて―鈴木比佐雄詩人に
散 文
鰊のような女
東京の屋上の女
菊とさくら―石川逸子詩人に
コルサコフの丘に立って―サハリンの〝エリック〟に
圖們のネズミ
エベレスト山
女人壮観の詩―モンゴル、二〇〇五年
北京黄砂警報
一人の詩人がしきりにネズミの穴を見ていた
―延吉広場で麦酒を飲みながら
主人のいないミュージックチェアの外で
少女のランコックよ
ソウルのテヘラン通りで―李元燮先生の霊前に
最後のテレビ
あるパレスチナの詩人に―世界の外のはなし
バラの中で燃える―沿海州にて
北京 二〇〇八年一月 夜
北京の砂つぶの詩―張明侠に
ああ 悲しい、崇礼門
崇礼門外
遥かなソウル北京の朝―曹良來に
水銀中毒者―確かなることを拒み意外であるように願う
マリアのマリア―血の海 2
シカの記憶―日本 宮島で
雪 岳―骨のくずれ折れる懺悔のなかで
捫蝨の詩
瀋陽、その年 冬の夜明けの到着
闇の中の手をふる植物―ソウル
輯安にて―沈昌萬教師に
ウォール街と楊平のキムチ漬け風景
血の海 1
モスクワの地下鉄を乗りに行き―李浩哲先生とふたり
赤い?魚の傷口の追憶―血の海 2
贈れない死の手帖―Myanmar BaganにてMaung Moe Ayeに
東京の蒼空をながめて、しばし
チャホンタ(Chahontha)
東海によせるオホーツクの海鳴り
エベレストの恥辱―ベーコンひと切れ
朝陽をながめる―ダライ・ラマを想いながら
冷たい太陽がのぼる茶馬古道を―朝日を見る
黒い石の国に来て 1
黒い石の国に来て 2
??文土器―脳と目と舌そして耳のない骸骨たち
杭州下りの紹興酒なり
ザルビノ港税関の出入国管理事務所の控え室で―中三、中哲に
ラングーン(Rangoon)の夜に火になる―Irawadi河三角州の東端
スヨリ
トンレサップ(Tonle Sap)はヒマラヤから―小さないのちの旅
ラングーンの夜に石を食べる―しきりにパンを焼くラングーンの夜
到着、とうちゃく、到着―ラングーン 2
摩天楼の下で待ち合わせ―バングラデッシュのソシオド・カイ・コスル
(Syed Kay Khasru)詩人を待ちながら
彼わたしはわたし彼は
憤怒と愛のなかに到着した―ある日の性の詩
ミャンマーの詩人のひと言―ヤンゴンのMyin Mu Maung Naing Moe に
つばめが声をだして本を読むように
箱根山のうた―鈴木比佐雄詩人に
あなたのくにの朝顔―佐川亜紀詩人に
日本への旅行鞄をまとめられるのか
デンイェンゴン(Danyinggone)の女たち―Ma Choに
うつくしい言語の記憶―ミャンマーのチャホンタ(Chahontha)
すさまじいアムール(Amur)河の憤怒
百尺竿頭に立つ国―韓国百年史を辿り来日をながめ
きみはKOREAを見たのか
ハバにて赤い夜明けの果てまで―雲上に
サハリンの黒白写真と雪
今朝は、ウラジオストクで
春
予 告
あとがき
著者略歴
【詩篇】
ミャンマーの詩人のひと言
―ヤンゴンのMyin Mu Maung Naing Moe に
詩人はあることを言う
しかしだからすべての詩人は
いつも思ったままに詩が書けるようになるには
ひとつの布施をなさねばならない
詩にとって何の役にも立たない、無意識の贈りもの
詩からもっとも遠くにあるもの
これをなさず詩を書く詩人の詩は
彼がどんな者であれ読んではならない
彼の口がぼくの?に張り付いては落ちた
ぼくの耳は彼の苦い舌へ伸びてゆき触れる
しばらくぶりで恐れ入った、その言語の
初めてのキス以外のあらゆる言語の遊戯のなかに
詩人はことばを咥えている