秋山泰則詩集
『泣き坂』
ながい戦乱は終息したが 人々は 混乱の中で激しく競い ここでも新たに敗れる者をつくりだしていた/不規則に汽笛が鳴る 汽車が止まる あたりに静寂がしみていく けっして慣れることのできない静けさがひろがる
(「泣き坂」より抜粋)
解説:小澤幹雄 |
A5判/128頁/ソフトカバー |
定価:2,160円(税込) |
発売:2010年6月24日
【目次】
Ⅰ 水のように
水のように 12
白い炎 16
バミルと言った人 18
口ごもる人 22
沈黙する人 24
ふるい柵 28
金色の人 32
雨の日 36
旗 竿 38
カマイタチ 40
歌 曲 42
いま死に給う母 44
泣かすなかれ 46
Ⅱ 泣き坂
泣き坂 50
伝 言 52
米をつくる人 54
雨がふる 56
狂 乱 58
木の柵 60
消 滅 62
脱 国 64
火の前で 66
もしも先に死んだなら 70
Ⅲ 花 器
失われるもの 74
百キロ爆弾のそばで 76
暁に祈る 82
ひめゆりの塔 84
高雄の空 88
花 器 92
Ⅳ 石 仏
石 仏 96
家を抱く 98
ペレット 100
祭 り 102
暦 104
どこにもない幸福な所 106
誕 生 108
竹 林 110
歌 集 112
解説 「慟哭」の通奏低音 小澤幹雄 116
あとがき 122
略 歴 126
【詩篇を紹介】
泣き坂
熊倉の渡し場跡あたりから対岸の泣き坂を通る鉄道線路をみると かつてそこを蒸気機関車が 身をよじるようにして登っていったという傾斜がよくわかる
その坂を汽車が下るとき 坂の中ほどで大きく切迫した汽笛と 甲高い制動音がひびき汽車が止まる時がある すると 周辺の村々は粛然としたものにつつまれ 泣き坂一帯は祭壇となり乗客も村人も祭司となった
ながい戦乱は終息したが 人々は 混乱の中で激しく競い ここでも新たに敗れる者をつくりだしていた
不規則に汽笛が鳴る 汽車が止まる あたりに静寂がしみていく けっして慣れることのできない静けさがひろがる