栞解説:鈴木比佐雄 |
A5判/208頁/ソフトカバー |
定価:1,428円(税込) |
発売:2010年3月14日
【目次】
Ⅰ 詩のパン
乳搾り娘のように 12
詩のパン 14
詩人へのアドバイス 16
開いてくる蕾 18
柿の木への言葉 20
絵筆を持って来い 22
空の虹 24
娘に詫びる芸術家 26
昆虫とペン 28
詩人への言葉 30
自力でたたきあげた評論家 32
秋の歌 34
一九八八年ミラノ世界詩人会議 36
じっと待っていろ 38
Ⅱ 詩人の引力
時間と空間 42
詩人の務め 44
満 月 46
永遠なる壮大さ 47
原始人の夕月 50
星の観察 52
白鳥座へ 54
頭上の白鳥座へ 56
僕たちは白鳥座を探した 58
惑星地球を眺める宇宙飛行士 61
船長の独り言 64
天文学の教授 ―弓先生の最終講義― 66
引 力 68
Ⅲ 僕のお祖父さん
思い出 72
僕のお祖父さん 75
山の小川の辺で 78
詩人の独り言 80
馬のイメージ 82
島の馬たちの鎮魂歌 85
郷里の島の夏 88
恋 歌 90
最後の点検 ―小島の空港で― 92
風のない林 94
養殖真珠 96
ホイットマンは元気よく闊歩した 98
Ⅳ 飛行機の影
庭 師 104
金閣寺 106
京都の庭園で ―遠い国から来た夫婦を見て― 108
飛行機の影 110
大洋航路船上で 112
旅上手 114
ジェット旅客機 116
彫刻の大家へ ―エドワード リーダーズ氏へ― 118
大沼湖 120
太陽に照らされたグランドキャニオン 122
抗議するペルシャ湾の鵜 124
一九九〇年十一月三日の文化交流
―クリステン デミングさんへ― 126
馬の歌 ―一九九〇年午年元日作― 129
猿の歌 ―一九九二年申年元日作― 132
雄鶏の歌 ―一九九三年酉年元日作― 134
犬の歌 ―一九九四年戌年元日作― 136
猪の歌 ―一九九五年乙亥年元日作― 139
Ⅴ 今夜は月が泣いている
今夜は月が泣いている 144
君はムンタダール・アルゼイディを知っているか 147
君たちの遠い祖先は 150
戦争と平和 153
核の冬 156
核の伝説 158
特攻花 160
沖縄の岡の上の墓 ―一九四八年に見て一九七九年に思い出して― 162
平和より大事なものはない ―沖縄伊江島の絵葉書を見て― 164
清しこの夜 ―フランツ グルーバーへ― 166
解説「バイリンガル詩人 郡山直の存在景」 堀内利美 168
あとがき 192
略 歴 196
初出掲載紙誌名および作品収録教科書名 204
【詩篇を紹介】
今夜は月が泣いている
今夜
二○○三年十月十日の夜
月は霞に隠れて
泣いているように見える
ブッシュ大統領が始めたこの愚かな戦争で
殺され傷つけられた人々のために
月は泣いているのだ
多くの人間
アメリカ、イギリス、オーストラリアの兵隊だけでなく
多くのイラク市民、
子供たち、女性たち、老人たち、
国連職員、
イラク警察官たちも
ブッシュ大統領が始めた
この愚かな戦争で
命を失ってしまった
両腕を失ったイラクの少年の世話は
誰がするのか
誰が彼に食事を与えるのか
誰が彼の排泄を手伝い
尻を拭くのか
死んで浅い墓に埋められて
野良犬に掘り起こされて
食べられたイラク少年のことを
ラムズフェルド国防長官はどう考えているのか
この戦争は間違った戦争だったのだ
この戦争がもたらした混乱を誰が始末するのか
イラク戦争は
人類の歴史のなかで
もっとも悲しい戦争だ