山本倫子詩集
『秋の蟷螂』
人と人は/国と国は/喰いつくしたり/喰わせ続けてはいけない/たとえ 喰われることに/快感を覚えたとしても
(詩「秋の蟷螂」より)
(詩「秋の蟷螂」より)
栞解説文:鈴木比佐雄 |
A5判/160頁/上製本 |
定価:2,160円(税込) |
発売:2009年3月11日
【目次】
第一章 秋の蟷螂
天窓 10
半分の湯の中で 13
来ない方がいいな 16
秋の蟷螂 19
同行 22
途中下車 25
ささやかながら十万本 28
借景 31
紐にまつわる 35
第二章 出来すぎのはなし
出来すぎのはなし ―キャベツ瞑す― 40
山の辺の道 43
佐 韋 46
おさらい 49
はからいのかたち 52
音符 56
箍 59
溺れているこんとんと?記号 62
嵌る 64
真正黴菌 68
バイアス思考 71
キノコ菌 74
その先は 76
翔ぶ 79
第三章 彩のある場所
漆喰のひとかけら 84
紅は 87
白から黒へ 90
色彩考 ―明度高き黄色― 92
色彩考 ―みどりがこわい― 95
彩のある場所 98
肩 102
オール・プリーツ 104
容 107
第四章 語らずにはいられない
線引きの道 114
語らずにはいられない 118
トンネルが近づくと 122
大合唱 126
イラクのこども 129
表面フラッシュ 132
かぶりもの 135
肺の中 138
落果 142
むさぼる神 144
祈る 147
あとがき 153
初出 覚え書き 156
略歴 158
【詩を紹介】
「秋の蟷螂」
喰うということは
食欲を満たし快感を伴うが
何かを欠損させ
そのもの自体を失せさせる
喰われるということは
疼痛を伴い傷がつき
惨烈を極めれば
死に到る
人と人
国と国
喰い 喰われる関係が
無限連鎖のように続いている
喰われ方 喰わせ方 喰い方を
秋の蟷螂の貌に見た
自然の掟に従うごとく
喰い 喰わせている
わたしは夫に身を喰わせ
夫の精神を幾らか喰ったが
全面的に喰い喰われなかったから
わたしが残っている
人と人は 国と国は
喰いつくしたり喰わせ続けてはいけない
たとえ 喰われることに
快感を覚えたとしても