豊福みどり詩集
『ただいま』
〝ただいま〟といえる時間が長いほど人は幸せであり、〝ただいま〟といつか自分に語りかけてくる時がくる淋しさを豊福みどりは透明かつ空気のようにやさしく作品で証している。
(帯文:山本十四尾)
栞解説文:鈴木比佐雄 |
A5判/128頁/上製本 |
定価:2,160円(税込) |
発売:2008年8月25日
【目次】
◆第Ⅰ章
袋/ただいま/うたた寝/パーツ/魔女/いつの間にか/などと/雷鳴/団塊/午後の空へ/足/棲む/雑草
◆第Ⅱ章
干しえび/椋鳥の悪戯/ツバメ/行き先/言葉/不安/待合室/噴水/帰途/少年兵 フラニス/心中
◆第Ⅲ章
赤いカンナの咲く道で/つばめのお礼/百舌の速贄/冬の鳥/蜘蛛の意図/蓑虫/コンドルの背中/曲芸/右往左往/茸狩り/どくだみ草/風の道/真実/カタカタ/会話
◆あとがき
【詩を紹介】
『ただいま』
私は時々 空を飛ぶ
遠い親鳥に会いに行くため
親鳥は
羽の繕いをしながらも
とんと 羽ばたくことはなくなった
いつも
私を産んだ場所で
首を長くして待っている
「ただいま」と言って
巣に戻る私を
三本足の
心もとない足取りで
迎えてくれる
いつまでも
親鳥が
私を産んだことを
忘れないように
再会した時は
二羽でじっと にらめっこする