コールサックシリーズ

星野典比古詩集
『天網』

星野典比古は神の子のように純粋無垢である。
全身を感動と激高の迫間で振動させている。
したがって、この詩集の詩群もまた静と動の対極にあり、
そこに21世紀の若者の思索をみることができる。


(帯文:山本十四尾)


栞解説文:鈴木比佐雄
A5判/128頁/上製本
定価:2,160円(税込)

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発売:2008年6月22日



【目次】


第Ⅰ章 天 網

天 網 10/天との干渉 12/境界線 14/鮭の遡り 16/聖 域 20/閃 光 22/新 緑 24
偽り捜し 26/蚊帳の外 28/からくり人形 30/秘 策 32/生命の道 34/激 励 36
涙 40/清廉潔白 42/跫 音 44/聖 誕 48/鎧 50/征 伐 54/弔 い 56/核 心 60
愛 64/蟻の一穴 66/希望の録画係 70/和平へのレクイエム 72/ 諸行無常 74
勇 者 76/未 練 78/満 開 80/幸福列車 82/星 屑 84


第Ⅱ章 滴ちてゆくもの

滴ちてゆくもの 90/母の哲学 92/御出来 94/棘 96/心の花 98/御蔭さま 100
幽 玄 102/鮭の切り身 104/仏 前 108/委ねられるもの 110/花の道 112/解 脱 114
生者の微笑 116/負い目 120


あとがき 122



【詩を紹介】


天 網


私の瞳の奥底には 怯え がある それを見抜く者は私を 弱虫 と言うかもしれない 瞳という泉の深部は覚られぬ場所と信じ 空き瓶や空き缶を放り投げてしまったのだ しかしゴミ拾いはしない 怯え こそが悶絶する魂の真実の輝きなのだと解釈していた

もう何年泣いていないだろうか 憂いや悲しみがないのではない ゴミが放出するという醜態を晒したくないのだ 血も涙もない という者は非情なのではなく 人一倍 怯え を宿しているのだと思えてくる 真実の哀訴には涙が必要であることは 最大の葛藤なのだ

今日も 嬉しい土産話を持って 家族の元へ帰宅する 冗談を言い合って 爆笑の渦 一歩一歩 絆が深まって行く そして私はまた 一つ 一つ ゴミを放り投げて行く これが現実だ 真実だと 自らを慰撫する そして 霊峰富士でさえその実態はゴミの山ではないか と自らを正当化する その悪態に当然の如く天から反発が来る お前は直叙だけしていればいい ?吐き! 汚名を着せられればこちらも反発したくなる お前が泣かせてくれないから!

天網恢恢疎にして漏らさず 網目を?い潜れる者よ さようなら 私は己のゴミの中から 天の網を引き裂くナイフを探し出し 震える手で握る

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