〈恐かったよね〉ガンタラ橋を渡るのは
古番線を張り ゆらゆらゆれる吊り橋から
落ちないようにぼくたちは必死に足許を
確かめながら〈小さな息をしてきたよね。〉
ガンタラ橋を渡って一日が終り
ガンタラ橋は増水のたび流された。
(詩「ガンタラ橋」より)
栞解説文:鈴木比佐雄 |
A5判/128頁/上製本 |
定価:2,160円(税込) |
発売:2008年7月8日
【目次】
第一章 プリムラの鉢
プリムラの鉢 10/癌入院 11/小 康 13/始末書 14/舟 17/抜け毛 20/北口 通用口 22
冬 至 24/うた 五月に 26/山茶花 通信 28/舞 茸 30/いわし雲 32/立春 前夜 35
神無月 37/それぞれの秋 38/座 る 40/宅配便 43/風 46/雲 48/物 心 50
第二章 阿武隈川
阿武隈川 54/ガンタラ橋 55/日のあゆみ 58/山 河 61/田村のはる 64/帰 郷 66
川唄 精霊流し 68/湖水伝説 71/磐梯山 73/安達太良山 76/寒い話 79
百日紅の樹の下には 82/柵 86/滝の桜 88/みどりヶ丘 点睛 91/山河(Ⅱ) 93
古 里 96/だるまさんの唄 98/連れ合い 101/初 雪 103/仮眠抄 105/飛べない鳥 109
旅の終りに 112/風 花 114/余 熱 Kに 117 サチに 119
あとがき 124
【詩を紹介】
ガンタラ橋
日照田 雨田
ガンタラ橋を渡って小学校に通った。
下田 中田 上田 古学校跡は中間点。
荻の久保から上行合まで
ガンタラ橋を渡る為に右廻をし
道草を食った。
小川の田中屋敷に級友が住み
手代木の遠藤君とも気が合った。
大善寺のお稲荷様の老藤は半ば枯れ
谷田川の川面に西陽が映り
帰宅のおそいぼくを叱る家族が居た。
春、れんげ田の中に疲れたぼくがいて
前と後にランドセルを背負った君がいて
汗かきながら空腹だった時の空の青さを
ずっと忘れずにいるあなたのそばで
時たまにいつ死んでも良さそうな
空の青さをお腹の底にたたみこみ
生きて来たはずの君の上まぶたも垂れ気味で
遣らずの雨が猫背をぬらし
〈恐かったよね〉ガンタラ橋を渡るのは
古番線を張り ゆらゆらゆれる吊橋から
落ちないようにぼくたちは必死に足許を
確かめながら〈小さな息をしてきたよね〉。
ガンタラ橋を渡って一日が終り
ガンタラ橋は増水のたび流された。