雨音のひめるリズムに
無意識のうちにもちつづける涅槃の音を聴こう
熟したみずからの季節の雨を放射し
てんねんの滅する匂いをうむ晩秋雨に
(詩「晩秋雨」より)
栞解説文:朝倉宏哉、鈴木比佐雄 |
A5判/200頁/上製本 |
定価:2,160円(税込) |
発売:2007年12月22日
【目次】
一章 晩秋雨
晩秋雨 10/雨の心理学 11/ 雨の黙語 12/時間に彫る 14/草むらの楽師たち 16
ドームの河 18/風と光と桜 20/海の蝶たち 22/線香 24/心象の花 26/朝顔 28
お山参詣 30/秋の梵鐘 33/秋色 34/りんごエレジー 35/寒椿 38/続 寒椿 40
竜飛岬燈台 42/風雪の聲 44/雪はわたしの眼にふる 46
二章 うちわ慕情
うちわ慕情 52/花火 54/身軽さの音 56/下駄の音 58/日常の音列の中で 60
峠の音色 62/空に彫る 64/風鈴 65/風雪の音色 66/徒歩の音 68/遠雷 71
車窓 74/人生のレール 76/されど石の沈黙 78/年輪 80/静止 82/風光 85
続 風光 86/石の沈黙 88/ある骨の音 90/身の刻印 92/母 93/波濤 94
三章 春の神がみ
春の神がみ 98/夏の神がみ 100/秋の神がみ 102/冬の神がみ 104/化城の世 106
太陽と汗 108/仏陀を街へつれてゆこう 110/仏陀の声 112/バラモンの妻 114
眼 117/いのち無心 120/《時間の中で問う》 122/その人は仏陀 123/影 126
蝙蝠人間 128/思念のかたらい 130/不軽菩薩の眼 132/滅びる 134/倒 136
運命地図 138/足!? 140/仮面 142/足の眼 145
四章 雨新者の墓
雨新者の墓 150/湛山翁の墓 153/平和への年輪 156/雨雀の墓 158/《単独者》 161
墓前に想う 164/鳴海英吉の墓 166/お盆墓の話 169/回帰 172/幻の川 174
墓のある風景 176/墓はかたる 178/《生死》 180/眼底の墓 182
詩作品初出一覧目録 185
『石村柳三詩集 晩秋雨』跋文 桐谷征一 192
詩集『晩秋雨』〔あとがき〕 196
【詩を紹介】
晩秋雨
落葉と雨は
触れてふれられて
触れられてふれて
感応のしずけさにしっとり雨の音をけす
里や山の落葉にふる雨はどこかふとさびしい
それは雨心の
ひとに言えぬ秋のさびしさの泪であるためか
ふかまった秋の雨の孤心をしってるためか
深遠のさびしさをしるひとよ
ときには
晩秋の染まった雨の色に
そのさびしさをつつんだ秋の愛の泪をながそう
雨のなかにあるひとときのやすらぎの
雨音のひめるリズムに
無意識のうちにもちつづける涅槃の音を聴こう
熟したみずからの季節の雨を放射し
てんねんの滅する匂いをうむ晩秋雨に
ふかく
しずかに移ろう色をもやし
秋の雨とともに沈黙してゆく山よ里よ
その沈黙の流露のこころに
秋の雨はただただ無心に
裸になりたがっている木々を打ち草を打ち
落葉とのちりゆく遊戯の真実のやさしさを放つ
秋雨や落葉をわえ土ねはん