大原さんの詩篇のメッセージは、時代の中で本当に生きたものだけが流す泪を見詰めて、その「泪を集めて」次の時代を作っていこうと言う力強い言葉だと私には感じられた。
(鈴木比佐雄「解説文」より)
栞解説:鈴木比佐雄 |
A5判/136頁/ソフトカバー ISBN978-4-86435-086-0 C1092 ¥2000E |
定価:2,160円(税込) |
発売:2012年11月22日
【目次】
一章 「泪を集めて」
汽 笛
母の乳房
火の路地 ―大阪大空襲三月十三日
中蓋の飯 ―女子挺身隊員と兵士
独りぼっちの戦死者
蝉の慟哭
興安嶺の舞い吹雪
道
漂流する船
海辺に立つ人
泪を集めて
二章 「残照」
夢
妹 よ
飯のひと粒
神様の隠れん坊
精神の溝
二百十日
残 照
暴風
自由の定義
万華鏡
三章 「七色の林」
新 雪
街角の春
千光寺の桜
情炎の京人形
御仕立人お京
砂 浜
瀬戸の渦潮
雲にたなびく都
中東の砂嵐
ポンペイ
国際線
七色の林
あとがき
略歴
詩篇
「泪を集めて」
何事もない顔をした真夏の空が
今日も熱波の熔鉱炉を掻き混ぜたように
沸き立てて果てしなく広がる
更に追い打ちをかけて原子放射能の恐怖が
姿も見せず警鐘の音さえ潜めたまま
心臓の鼓動に波うつとき
東北の空を いや此の国の全ての空域を
隙間なく核の放射能で覆い尽くそうと企てる
広島 長崎に炸裂した原子放射能の惨劇の
十数倍にも勝る死滅の空間に追いたてられ
全ての物を放置し去り 意に反する遠隔地に
避難の場所を求めてさ迷う原発難民の方達
二〇一一年三月一一日 東日本を襲った
あの大地震と大津波 はたして
天災とばかり言いきれるだろうか
地球温暖化に伴う予期せぬ集中豪雨
年ごとに度を上げてゆく異常高温
春と秋が消されてゆく季節の衰亡
人間の限りない欲望の前に 破壊された
オゾン層の崩壊にあると言われる昨今
原子核の発見とその使用は
人類最大の不幸とささやかれている
塗炭の淵に慟哭する被災者の方達
放射能難民の方のなげきと苦悩
潰れるほど握り締めた拳の上に流した泪
悔し泪は流れるだけ流すがよい
共有する泪を掻き集めて立ち上がろう
復興と言う大義名分に隠れて
言葉は遊び呆けて霧の中
許すな原発 核の廃絶
その上に築き上げた復興の花こそ
未来永劫に変わることのない
桃源の里に爛漫と咲き誇るだろう