ねこは かるいね わたのように
ふわりと だきあげて
悲しいと思うのは なぜ
いのちよ
重くなれ
利用されないように
(帯文:詩「いのちの重み」より)
栞解説:鈴木比佐雄 |
A5判/136頁/ソフトカバー ISBN978-4-86435-068-6 C1092 ¥2000E |
定価:2,160円(税込) |
発売:2012年8月7日
【目次】
一章 「いのちの重み」
いのちの重み
ひとつの井戸を
樹
誰の土地
白い花が咲いたら
芽吹く幸運児
置き去りの里
墓 参
草むらの捨て犬
猿のブリッジング
クマの赤ん坊
娘の婚姻
二章 「星の声が聞こえる」
星の声が聞こえる
未来を想像できない国
民は豚になる
生き方をえらぶ
人間の退化
異界のタネ
恐竜カー
物たちの話し声
アステカのミイラ
地球の芯で
人間のいなくなった後に
生き残れるか人間
居場所
三章 「ひとりぼっちの子守唄」
ひとりぼっちの子守歌
少年の正義
チューリップ殺人
歩行者天国の胃袋
闇夜の父殺し
飽食の若者たち
バラの傲慢
これが美しき国
四章 「小さな機影」
戦争を知らない
小さな機影
老練な詐欺師たち
黒糖をなめると
沖縄の怒り
鉄の奴隷
流浪の民
大きなあやまち
トマトのように
ヒロシマを語り継ぐ
あとがき
略歴
詩篇
「いのちの重み」
ねこは
かるいね
わたのように
まがった鋭い爪
すい直とびのバネ
ねずみをかみくだく歯
くらやみでもみえる目
ねこは
ふわふわ
くものように
ねこのすべての武器も
役にたたない
ふわりと だきあげて
悲しいと思うのは なぜ
おまえを わたしの自由に
動かさないよ と言ってみる
唯一 皮肉にも おまえの敵は
このわたしなのだから
ねこは いつから野性をすてて
ペットになりさがったの
食べものがなくて
おなかを空かすのがこわいのだ
アンデスの雪山の頂上から
発見されたインカの
あどけない子どものミイラ
おなかいっぱい食べて
ねこのように眠ったままの
やさしかった大人が だきあげて
ぬくもりのまま 神に献上した
最愛の子を 最上の捧げものとして
神が喜んだろうか
神が願いをかなえたろうか
いのちよ
重くなれ
利用されないように