このひとは三歳にしてすでに〈作家の眼〉を具えておられたことに、驚愕する。
幼年の日の自分を語るにも、自己愛(ナルシシズム)が仕立てたシュガー・コートを一切着せてはいない。
彼女は詩人として、わけても姑君から習得した大分弁による詩の朗読は絶品だが、さらに加えてもうひとつ、おそるべき才能がここに露わになった。
さあ、これからどうなさいます? 門田照子さん―。
帯文:新川和江(詩人)
解説:鈴木比佐雄 |
四六判/248頁/ソフトカバー |
定価:1,620円(税込) |
発売:2012年6月8日
【目次】
一章「水中を逃げる夢」
父の記憶―阿円忌を迎えて
坂のある家
母の入院―消毒薬の匂い
地下室と甘藍―うどん屋の先生
市電と消えた街―福岡大空襲の夜
水中を逃げる夢
耳慣れない音楽―疎開先の八月十五日
二章「ローランサンの橋」
三軒長屋の住人たち
風船爆弾製の雨合羽
雪降る朝に
祖父の家憲
片思いと創作ノート
手づくりの制服―アルバイト高校生
タイピストを目指して―就職難のころ
雀をくれたお兄さん
深みゆく秋を讃えながら―母の句集
ローランサンの橋―めぐり逢った人とともに
三章「貧しさのすすめ」
暮らしの始まり
貧乏と独立
風 鈴
歳 月
幼春時代
え? 「カドタテル」子
二人しずか
別姓を選んだ娘夫婦
貧しさのすすめ
四章「或る風景画」
拾われた財布
壺のはなし
祖父のみずゑ
或る風景画
山の見える窓
蝉しぐれ
母のミシン
母への手紙―母さんの五十回忌
詩道楽
山から海へ
「蝶」から「耳」へ
空白の席
うつくしい壺を
五章「語り部のご褒美」
ふるさとの発見―ははからの贈りもの
方言の温もりを詩に
真紅の薔薇
訣れの構図
岡部ワードの洗礼を受けて
岡部隆介『魔笛』―抒情詩を生きた孤高の詩人
高田先生を偲んで―追悼 高田敏子
勿体無いこと!
語り部のご褒美
【解説】福岡大空襲の悲劇を母の声で風化させない人
門田照子エッセイ集『ローランサンの橋』 鈴木比佐雄
初出一覧
あとがき
略 歴