ふくらむ ふくらむ/小鳥の夢//両手をしっかりと繋いで/波が歓声を響かせながら/磯辺に向かって/激しく駆けよってくる//「ぼく」はその砕け散る/真っ白な飛沫の中から/広い空へと飛び立つのだ(詩「小鳥の夢」より)
栞解説:鈴木比佐雄 |
A5判/160頁/上製本 |
定価:2,160円(税込) |
発売:2012年5月2日
【目次】
一章 小鳥の夢
小鳥の夢
神の息づかい
仏の里―臼杵石仏にて
啓蟄の呼び声
蜜を吸う鶯
紫陽花と五銭玉
夏のほととぎす
柿をありがとう
紅葉のように
晩秋散策―大分川、大野川源流
冬のカラス
重い時間
世界の縄張り
鴨の温もり
冬の構図
冬の花火
二章 からたちの花
からたちの花
秘められた笑顔
ランドセルの匂い
かくれんぼの鬼
雨漏りこわい
七草粥をすする
父の痕跡
夢の中で父が
ちびっ子広場で
ある童話
初秋の海
お婆ちゃんの笑顔
若草色の小人
大野川のタンポポ
三章 緑の風に
緑の風に
折り重なったまぼろし
ちいさなあぶく
羽田空港にて
落ち葉の音
病室にて
仏の写真
たそがれの墓地
訪問者の風
夜行列車の客
魂の影
四章 蛍
蛍
胸を刺す苦さ
白い雲の幻想
遊び友達
にらめっこ
「うっそー」
えーい、やあ
どんぶりこ
優しさの交信
国東半島にて
山に向かって
あとがき
略 歴
【詩篇】
「小鳥の夢」
新しい朝の
凍えた霜の芯から
熱く立ち上がるものがある
寒風にこぼれ散る
サザンカの花
その葉陰には幾つもの
可愛い蕾のまなざしが
赤く燃えている……
夜は一線のむこうに消え
はっきりと朝が来た
はるかな海の彼方
太陽にせかされて
けさも 金色の竜が
光芒をきらめかせながら駆け上がり
あでやかに乱れ
やがて静かに姿を消す
空は春を呼ぶ水の色
時間があふれ
光があふれ
ふくらむ ふくらむ
小鳥の夢
両手をしっかりと繋いで
波が歓声を響かせながら
磯辺に向かって
激しく駆けよってくる
「ぼく」はその砕け散る
真っ白な飛沫の中から
広い空へと飛び立つのだ