「コールサック」日本・韓国・アジア・世界の詩人

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白河 左江子 (しらかわ さえこ)


<経歴>

1935年、岡山県生まれ、岡山市在住。

詩集『愛のかたち』、『もしかしてあなたもたぬき』、『もういいか~い まあだだよ』、『地球に』

詩誌「黄薔薇」同人。

日本現代詩人会、日本詩人クラブ、中四国詩人会、岡山県詩人協会、各会員。

<詩作品>


無色透明



無色に生まれて
色づいていく
赤く
青く
黄に
いつか混り合い
一つの色が出きあがる


透明に生まれた
そのときから
透明度は薄れていく
隅から
底から
真ん中から
犯されて犯されて
何も見えなくなるまで
止まることなく


無色になるまで
皆 同じように




腕時計
  ―岡山空襲を語り続けて―



B29 一三八機から落とされた
十万発の焼夷弾と焼夷爆弾は
岡山市街地の
街路樹を焼き 電柱を焼き
公会堂を百貨店を銀行を焼き 家を焼き
逃げまどう人々を焼き
ガラガラと音を立てて城を焼いた
一時間半ほどで
焼け野原を作り上げた


焼け跡に残された
丸形の小さな腕時計
長針と短針は
六月二十九日(昭和二十年)未明二時四七分で抱き合っている


  私を見て
  私の動いていた時の音を聞いて
  女学校へ通う娘の腕で
  働いていた時の輝きを思い出して
  学徒動員の仕事場で
  私をなん度も見たあのギラギラした目が
  語っていたことを思い出して
  私が新聞に載った理由を考えて
  生き残った私と持ち主が
  たくさんの高校生の前で
  父も母も兄弟も失った
  あの悲惨な空襲体験を語った意味を考えて
  あの日から六三年
  一七〇〇人余と言われる
  一夜にして亡くなった命を抱いて
  ずっとあなたたちを見ている


米軍が選んだ一八〇都市のうち
第三期一三七中小都市無差別爆撃計画
十六番目の岡山市

あのときの少女が少年が
語り継ぎ語り継ぎして
守っている日本国憲法第九条




地球に



地球に生まれて
地球で死ぬ


人間の命をつないで線にして
太く長くと暖めて
子孫を絶やさないために
燃やしていた石炭 より
石油の方が効率がいい と
地層深くから吸い上げる
何千年何万年と
抱きつづけてきた地球の命
千メートル掘れば
吹き出す温泉
いつか地球はトンネルだらけになって
もつれもつれて
お互いがお互いを縛り
破裂しないか
いびつになった地球から
海水が滝のように流れ出ないか
科学がドンドン進んで
人間が増えて
パンパンになった地球から
似た星を捜して
宇宙に次々と飛び立つ
やがて交通事故が起きるだろう
宇宙船はチリヂリになって
宇宙をただようだろう
廃品回収の日は決めたのか
空中交通法は制定しないのか


学期に一度の廃品回収に
公園へ新聞や古布・あき缶を持って行く
子供たちが手伝っている
この子たちをどうやって守ったらいいのか
地球で安らかに死ぬために


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