岸本 嘉名男 (きしもと かなお)
<経歴>
1937年、大阪府池田市生まれ、大阪府摂津市在住。
詩集『彩雲』『碧空』『釣り橋ゆらり』『四季巡る』『めぐり合い』『さすらい』『見つめつつ』『早春の詩風』『岸本嘉名男詩選集一三〇篇』ほか。
評論・研究書『文学小論集』『私の萩原朔太郎』『文学の小径』。
関西詩人協会会員。
<詩作品>
大 寒
雨がしとしと
じーんと冷える
大寒にみなふるえ
心の扉も閉じたまま
おりから校庭の
スイセンの群れが
けなげにも
薄白い花をなびかせ
ワーズワースの詩句ほどではないが
なごませてくれるのは有り難い
マスクで表情こそ見えないが
じっと見つめている君
笑顔を続けていよ
眩 惑
むっつり黙した石に
人はつばきを吐きかけた
石は無表情のまま
路傍の片隅で
じっと夕立を待ったが
きらめく想いはままならず
上下の熱気に挟まれて
秘かにあえいでいる
人はそんな石のことなど
見向きもせずに
ふみつけ
けとばしたりして
なお猛暑にかこつけ
自分を見失いながら
さまよっている
夏の午後