司 由衣 (つかさ ゆい)
<詩作品>
花の一瞬
有用のもの
無用のもの
振り分けながら
思う
ラインを飛び超えなければ
次のゴールは見えない
過ぎ去った日の出来事は
みんな棄てたね
袋詰めにして
ほら 見てごらんよ
惜しみなく切り捨てた枝や葉の下から
早くも咲きかかる
花の一瞬がある
魂の奏でる音色
洞窟めいた狭い空間を
ぼんぼりの灯にみちびかれ
じぶんの影に揺らめきながら
仄暗いテーブルにたどりつく
(遠い場所に来てしまった
妖艶な少女が近づいて
「何になさいますか?」
カフェラテと答えた
ほかの仲間が注文したのは
スコットランド産の強い酒か
グラスに注がれた液体は少しばかりの
まったりとした琥珀色をしていた
(小鳥の悲しみは痛いほどにわかっていた
「少し飲む?」
女仲間のNさんの心根が身に浸みた
突然 カラオケが鳴りだして
Nさんが歌った ♪「ラストダンスは私に」
コントラルトな歌声は
(夜深けに歌う小鳥のレクイエムに似ていた
いつのまに終わっていたのだろう
いきなりカラオケが鳴りだして
男仲間のTさんが歌った ♪「有楽町で逢いましょう」
フランク永井そっくりの声色が
わたしを幻のオーロラへ誘った
ぼんぼりの灯に映しだされた
男の影にぐいと魅せられ
熱る頰をそむけた
(小鳥のいる場所に戻ろう
世の中という洞窟に
灯りを点すのは
アガペーでも イエスでもない
ましてタナトスではない
エロスという魂だ
君という小鳥が
空を飛べないのは
空が汚れているからでもない
翼を傷めているからでもない
どこへ向かって生きるか
魂の奏でる音色を聞こうとしないからだ
*1 神の愛
*2 フロイトの言葉で「死の本能」
*3 プラトンの言葉「美のイデア」