「コールサック」日本・韓国・アジア・世界の詩人

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おぎ ぜんた


<経歴>

1952年 鹿児島県生まれ、アフリカ・ケニアやルワンダに在住。

農業技術者。

詩集『その先の曲がり角のバオバブの樹の下で』(詩人会議出版)

『飛ぶきつね』(詩人会議出版)

『アフリカの日本難民』(新鋭こころシリーズ・コールサック社)

児童小説『幸せの器』(偕成社)

<詩作品>


笑うやもり


アッハハハハハ
アッハハハハハ


笑う 笑う
やもりが笑う
腹の底から笑う
逃げながら笑う


政治論争で
酒のビンは増え
イスが投げられ
欲深い大統領を笑う
庶民は国会議員のベンツに怒り
豪邸をねたみたおし
腹の黒さを笑う


ホンゲラホンゲラ
ホンゲラホンゲラ
 「ああおかしい」


闇の向こうから
笑い声が聴こえる
酒を飲んでいるのか
内緒話で笑っているのか
カカアをからかっているのか


キッキッキッキ
ギッギッギッギ


事業に失敗しても
出来の悪い子どもでも
カカアが逃げ出しても
死ぬときも
脳がからっと晴れるほど
笑っている


 「あのおやじ、首は痛いから
 お腹を絞めて死のうとしたんだってさ!」
つまらないジョークでも笑いこける


ワッハッハッハ
ワッハッハッハ


やもりは笑う
泣き顔を笑い飛ばす
市場で果物売りながら子どもの未来を語り
胸をつき出し腰に手をかけ豪快に笑う


親も子も死んで
泣いているのか
笑っているのか


暗い過去とつらい現実と
未来の金塊のために
いつでも笑いが光りはじけ
笑いの中に世界が沈んでゆく


アフリカの熱風下では
もう笑うことしか残されていない


白人に馬鹿にされても
黄色人に怒鳴られても
三叉路で仲間に見放されても
やもりは笑う


アッハハハハ
組み込まれたゲノムだから
やもりの遺伝子は
今日も爆発する
サバイバルするために
天までとどくほど笑い
アッハハハハ
そして
ジャンプする


    *「万歳」の意





ブルーサファイア
 
     

草原の夜のサファリでみた
トムソンガゼルたちの青白い眼は
ホタルのように光っていた
対のブルーのサファイアが点り
心の揺れを示すように


闇の中でうずくまり
夜のとばりに息をひそめ
星明かりに明日を想う生き物の吐息


あれは現実には存在しない光だ
光がなければ光らなかった光
まるで
揺れる
彼岸の魂
何百年も前の
激しい恋の残照
燃え尽きた死者の愛が
懐かしい遠景となって
僕の心に浮かんでいる




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「コールサック」(石炭袋)120号 2024年12月1日

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