冬の陽に映える松島の沖の/牡蠣の「畑」を通り過ぎ/海岸線すれすれに/電車は/石巻へと向かう//駅に降り立つと/フランソワーズ・アルヌール/「003」が/憂いに満ちた美しい眼差しで迎える(「黄色いマントの戦士たち」より)
栞解説文:鈴木比佐雄 |
A5判/136頁/上製本 |
定価:2,160円(税込) |
発売:2011年8月19日
【目次】
Ⅰ
春の雨あがり
薫風の頃
麦 秋
水
やもり
虫の音浴
百匁柿
我が家のうさぎ
Ⅱ
非・否・卑の笑い
同じ笑顔
ニッポンノコトバ・日本の言葉
文句は何でも学校に
疲 労
大晦日の宴
マークシート
Ⅲ
小売店が消えていく
家族の食卓
名 簿
冷房の夏
田園風景
がん列島日本
Ⅳ
黄色いマントの戦士たち
大津波に流されて
ジェイヴィレッジ近く
福島第一原子力発電所
計画停電
禁断の扉
あとがき
略歴
詩篇
「黄色いマントの戦士たち」
冬の陽に映える松島の沖の
牡蠣の「畑」を通り過ぎ
海岸線すれすれに
電車は
石巻へと向かう
駅に降り立つと
フランソワーズ・アルヌール
「003」が
憂いに満ちた美しい眼差しで迎える
駅前には乾いた冷たい風が吹き
一人、二人
観光地図を手にした
リュック姿の大人が歩きだす
こちらに一体
また向こうに一体
「ロボコン」
「仮面ライダー」
「サイボーグ」たちが立っている
小売店の並ぶ商店街
呉服屋
布団屋
文具店
電器店
看板の字体や
ガラスの引き戸や
店内の配置もどこか懐かしい
寿司屋に魚屋
木造りの由緒ある旅館が立ち並ぶ
昭和を思い起こさせる街並み
「石ノ森萬画館」にもある
昭和の風景
いや
この街全体が昭和を残す
かつて
にぎやかだった漁業の街
石巻は繁栄し
魚市場は活気に溢れ
暮れともなれば
このあたり一帯
通りは身動きできないほどの人出だったという
十二月の最後の日曜日の午後一時
街の人たちはどこへ行ったのか
二人また一人と
「萬画館」周辺を
中高年や親子連れが歩くだけ
街で出会うのは
サイボーグの戦士たちだけ
戦争をするために造られながら
それを是とせず
「ブラックゴースト」
死の商人と闘うべく
世界の各地で奮闘した彼ら
この石巻に
活気を取り戻さんと立っているのか
今でも暗躍し
戦争を陰から煽る死の商人と
闘おうとしているのか
黒いブーツに赤い上下の戦闘服
黄色い
マントのようなマフラーを翻し
島村ジョーの「009」は
凛々しい姿で
雲の厚くなった石巻の空に
立っていた