水滴を 油がはじいているのか/ひきしまった 小麦色の/その皮膚の 背中いちめん/水滴が 無数の玉になって/ころころと 玉になって/おちもせず キラキラと ひかっている(詩「見知らぬ少女」より)
栞解説文:鈴木比佐雄 |
A5判/176頁/ソフトカバー |
定価:2,160円(税込) |
発売:2011年7月8日
【目次】
Ⅰ章 見知らぬ少女
見知らぬ少女
海女の指先
おかしな娘
人間のねがい
浄水場の水
弁当をつめる
渾名はたぬき先生
不思議な男
眠い男
プールに行く男
ぼけの花
枇杷の木よ
サルスベリの木
櫻 草
Ⅱ章 秋の午後
にこにこしなきゃあ あかんなあ
変形性関節症について
こんなんじゃなおらない
落葉の頃
その意気に
はじめての路上教習
自治会で知り合ったおばあちゃん
吹矢教室にて
八十四歳頑張って生きてるの
さつきが咲いた
秋の午後
Ⅲ章 風のいたずら
現代サラリーマン考
近頃は
どうなってるの?
このあたりの道
住宅街の路地
自動ドア
散 歩
当世の猫事情
犬
犬の老後
小鳥とパン屑
風のいたずら
Ⅳ章 わすれえぬこと
お茶のんでーな
りんごの果汁
おかあはんもよろこばれるがな
リリーよあなたは今どうしているか
わすれえぬこと―おとうさん―
赤木健介夫人美弥子さん
死の重さ
ふりかえりふりかえり駅のホームの方へ
二〇一〇年十月二十二日
大川小学校
あとには泥と水たまりがあるばかりであった
あとがき
略歴
詩篇
「見知らぬ少女」
どうして 油は 水をはじくのだろう
油がのると
どうして つややかに輝くのだろう
水滴を 油がはじいているのか
ひきしまった 小麦色の
その皮膚の 背中いちめん
水滴が 無数の玉になって
ころころと 玉になって
おちもせず キラキラと ひかっている
水着の少女のすんなりした姿態
かたい蕾のような ひきしまった からだ
今 プールから あがったばかりの
濡れた つややかな黒髪
したたりおちる雫
うるしのようにひかっている からだ
抜手をきって 泳ぎぬいたあとの充実
緊張した筋肉の美しさ
油にのって 油がうちがわから
にじみだしている背中
無数の水滴を宝石のようにひからせている
見知らぬ少女