酒木裕次郎詩集
『筑波山』
目送、目逆を問わず、酒木裕次郎はその目奥に徳之島の海色と筑波山の
山色とともに、今の時分の恬静感をあふれさせて生きている。
――詩人・山本十四尾(帯文より)
栞解説:鈴木比佐雄 |
A5判/112頁/上製本 |
定価:2,160円(税込) |
発売:2010年10月12日
【目次】
Ⅰ章 筑波山
新春の筑波山
春の筑波山
夏の筑波山
秋の筑波山
冬の筑波山
星空の筑波山
筑波山に育った女
筑波に嫁にきた女
私の筑波山
Ⅱ章 徳之島
徳之島Ⅰ
徳之島Ⅱ
徳之島Ⅲ
はるかなる島の螢よ
友
春 三月の声
大空襲 ―戦争をしない勇気
モクレンの花の咲くころ
Ⅲ章 平家の里 雪
平家の里 雪
千年の都・平安京(京都)そして大津
名曲喫茶 ライオン
自分が生まれた国は
疲弊を濯ぐ
風 に
パピヨン トーシン ルナ セカンド
オブ シャンシャイン
愛犬 イチ
レクイエム
あとがき
略 歴
【詩篇紹介】
春の筑波山
自分を出して生きなさい
と言った女は二十六歳で
いま想えば二十歳の自分には
随分年上のお姉さんにみえた
白いハイヒールを履いて
長い脚で歩いていた
数えれば今七十歳を過ぎて
熊本で寺のお内儀に納まっている
春の選抜で母校は
二十年ぶりに優勝した
ひとりひとりの技術が高い上に
心がひとつになったので
偉業が達成されたのだ
と毎日新聞は伝えた
見よ よく見るがいい
私は不思議でならない
ありのままを享け入れるしかないのだろうか
火葬業務はスマートに
進行していく
あちらでもこちらでも
友人が逝去していく
知人が逝去していく
とはいえ世の中は
昨日も今日も明日もなんの変哲もなく
打ち続いていく
夜が明けて昼になって
夕方になって夜がきて
また夜が明ける
そうであるならば
どうすればいいのか
おのずから決まってくるではないか
私はそのとき そのときに
没頭することに決めた
前進 前進 また前進
筑波山は今年も 梅が満開だ