吉田博子詩集
『いのち』
日常の苦悩は日常のなかで、/日常の安息は日常のなかに、/そして日常の精神(こころ)のもちようで、/解決し存在し実感できるもの。/この詩集の詩群はそう示唆しながら輝いている。/生き生きとしている。(帯文 山本十四尾 より)
栞解説文:鈴木比佐雄 |
A5判/128頁/上製本 |
定価:2,160円(税込) |
発売:2009年7月7日
【目次】
第一章 たっくんと娘
たっくんと娘 10
長靴を履いた娘 12
わたしの宝物 16
やもり 20
ハムスターのお母さん 24
川の字に寝ていたら 26
芽をだしたナタ豆 30
いつも揺れて 32
奇跡の生命 34
第二章 備前へ
母 と 38
母 40
母を見つめる 42
今やっと 44
畑 で 46
そら豆 50
とうがたつ 54
祈りの姿 58
うしなう 60
まんさくの木 62
ほんとうに 66
無意識のようにした事 70
備前へ 72
片上行き 78
第三章 いのち
ぼんささげ 84
痂 88
音を聞く 92
空 94
死のかたち 98
犬とわたし 100
虹色にひかる 104
白い花びらのように 108
あかるいあかるい光の中で 112
その橋の黒ずみは 116
いのち 118
あとがき 122
略 歴 124
【詩を紹介】
いのち
木がいます と
タイ語ではいう
木には命が宿っているからだ という
国の言葉が
生きとし生けるものと
命をもっとも大切にしている源
戦争は人の命を粗末にすること
人間同士が敵対して
殺し合いをする
ことわざにも
「一寸の虫にも五分の魂」とある
一つ一つの生に命の輝きが
あかりを点している
たとえ小さな灯でも
命が消えゆくまで大切に大切に両手で
囲み守ってゆくことが
一番大切なこと
花は美しく咲き散ってゆく
命の儚さを嘆くことはない
継がれてゆく
たとえば球根となり実となり種となって
次世代へと引き継がれる
人の命も亡くなっても
その命を育みその命の輪となって
生きた者達の心の中で
大事に継がれる思い出となり
来世に生まれ変わる
森の中で
命のささやきが聞こえませんか
逝ったあなたに語りかける声に
答えるこだまが響くように